メトロポリタンオペラ、レヴァイン完全解雇に対する反撃

またもやジェームス・レヴァインの話が(ローブローですが、)

トレンディングしているNYの音楽界

 

先週はNYでオペラ三昧で、今週バケーション中のオペラオタク母ですが、メットの噂が回ってきて、ちょっと一言と思いブログアップです。

先週のメットは、大雪の前日だった火曜日の夜の『セミラーミデ』を除いては、『マダム・バタフライ』も『エレクトラ』も『ラ・ボエーム』も席は殆ど満席。

特に来シーズンからの新音楽監督、ヤニック・ネゼ=セガン氏(以下ヤニック君?)の振るシュトラウスの『エレクトラ』は、オペラの筋書き=現在のメットの世代交代(首席交代?)を思わず重なり合わせてしまうほど、素晴らしかった!

神経衰弱ぎりぎりの状態で「悪」の過去を断ちりたい思い、そして新しい、若々しい、風(ヒーロー)を迎える、劇的で勇まし蜘蛛緊迫するエンディングは、まるでメットオペラの現状況が重なりあったかのようで、パフォーマーも観客も、新リーダーの到着に拍手喝采でエールを送っているかのような盛り上がりでした。

そして『エレクトラ』の翌日のレディースナイト。オペクラスの生徒のみなさんと『ラ・ボエーム』。完璧なパフォーマンスとは言い難いところもあったけど、若々しいパフォーマンスで、ゆったり良い雰囲気でメットのゴージャスなプロダクションを楽しめました。(こちらの報告は後日)

そんな感じで、清々しい気分で終えた先週…

??

ヤニック君式で大評判の『エレクトラ』、カーテンコール

 

けれど…

 

バイバイ ? レヴァイン

週明け3月12日、月曜日、メットがジェームス・レヴァインと完全断絶を発表。

メットファンにも総支配人のピーター・ゲルブ氏からEmailで、ご報告が…

メット総支配人のピーター・ゲルブ氏からのEメイル

約3ヶ月以上の調査の結果、レヴァイン氏のセクシャルハラスメント行為に対して確固たる証拠が確認された故の結末らしい?

 

ゲルブ氏からのメイルには、具体的なセクハラ行為は記されていなかったけれど、NYタイムスには、レヴァイン氏が彼を崇拝する学生達にどんなパワハラ、セクハラ行為をしていたか、生々しく綴られていて、ホント…気分が暗くなる….

でも、先月発表された来シーズン演目とヤニック君の2シーズン早い就任。そして、月曜日の「メットーレヴァイン断絶」発表で、メットは、早く汚名挽回したいんだろうな…と、先週の意欲いっぱいの指揮を思い返していたら….

(♫ここでエレクトラのオケが流れてもおかしくない笑)

???

レヴァイン氏…

メトロポリタンオペラを提訴!?

 

 

 

「名誉毀損」と「契約違反」

いやあああ?

終わらない〜。

さすがアメリカ…

容疑者も被害者になれる??

このニュースを聞いた関係者も、みんなびっくり。

 

提訴の内容は、「名誉毀損」と「契約違反」

「名誉毀損」は、レヴァイン氏の長年のメットへの貢献にもかかわらず、レヴァイン氏の「言い分」も聞かず、セクハラ現行者として、彼をクビにして名誉を汚した点。

そして、

「契約違反」は、名誉音楽監督として2016年から10年間の契約を電話一本破棄された事について、だそうです。

興味深いレヴァイン側の言い分は、去年12月にNYタイムスやポストにすっぱ抜かれたセクハラの疑いは、コントラクト以前のものだから、関係ない、、、と(なんだそりゃ??)

そして、どんな契約にもよくある”モラル条項”たるものが、レヴァイン氏とメットの契約にはなかったと。だからたとえ、セクハラ、もしくは不謹慎な行為がアーティストや学生とあったとしても、それを理由に解雇されるのは契約違反だと主張しているらしいです。

でも一般的には、あえてモラル条項がなくても、モラルなんだから、当たり前らしい。けれども、書いてないってことは、契約の中にないってことだから、アメリカ式に考えると、レヴァインの勝ちなのかな、、、、???

しかし!

訴えるってことは、もっと掘り下げても良いって事?

いや、多分それとこれとは別なのかな。

例え自分がセクハラしてても、10年間の名誉監督の契約は契約だから、破棄をするメットにオチがあるのがアメリカなの?

そして、契約しているのに、レヴァインが言い分を説明する機会を与えなかったメットはまたもや違反?

レヴァイン氏セクハラ疑惑の一つに、未成年に手を出したとあるけれど、それが本当なら刑事問題。でもそれはその後立消え状態になってレヴァイン氏のお縄は免れたよう。

レヴァイン氏側は、団体としてのメットと、総支配人のピーター・ゲルブ氏を訴えてるんだけれど、ゲルブ氏については「才能あるマエストロ(レヴァイン)を追い出し、アートの訓練設けていない彼自信が、メットのすべてをコントロールしようと企てている。」やら「マエストロの容姿の悪口を言って、この行為は支配人ではなくいじめっ子の行為だ。」と攻撃。

他のオペラカンパニーの支配人たちは、ゲルブ氏に同情的なのも興味深い。

レヴァイン氏は、メトロポリタンオペラに580万ドルの賠償金を要求しているらしいそうです。メット(というかメット総支配人のゲルブ氏)は、#metooのムーブメントを、自分達の都合の良いように利用してるって…

ちなみに、彼の音楽監督としてのメットからの年間のお給料は、70万ドル、プラス5万ドルの経費。それに足して、一公演につき2万7千ドルの出演料(指揮料?)これは、メットの平均よりも1万ドル高いらしい。

おまけに、契約ではメットはレヴァイン氏の許可を得ない限り、他の指揮者に彼以上の出演料を払えないことになっているって!

もうAbsolute Power(完全な権力)ですね~。

Image result for James Levine
レヴァイン氏とゲルブ氏 by Henney Ray Abrams/associate press NY Timesより

 

 

才能+権力 ≠ 余裕/自信

確かに彼は、才能のある指揮者で、彼のモーツァルトとか、私は大好きだったけど。

でもどうなんでしょう。

この問題が上がる前に、引き際を逃したレヴァイン。

腰の問題にパーキンソン病と、2シーズンもお休みして、復帰した後は、パフォーマーから彼の指揮について行けないって、苦情も出たらしい。

ここまで、名声を築いて、でもまだまだ自分は行けると若手に座は譲らず。

結局、泥沼エンディングって…

 

セクハラ/パワハラはもちろん許せない行為だけど、まず、退く時をあそこまでこだわったのは、なぜだろう? 彼は誰もが認める才能ある指揮者だったのに。

病気になったからと、追い出されるのは確かに非情。でも、その任された仕事が出来なければ、今まで通りとはいかないでしょうね。

メットの絶対権力のドンの座に執着して、でも同時にセクハラ、パワハラ行為をしていて。

王座に居座るパワーで、自分よりも力がない人々に屈辱を味合わせる。

そこまで才能があったら、自分に自信を持てて、周りにも寛容になれるのでは?

実は自信がなかったのかしら?

 

なんだか、ホントに嫌な気分、と同時に、色々理解できないことがいっぱい。

メットに通うオペラファンとしては、難しいかもしれないけれど、全てがきちんと整理されて、最高のプロダクションとパフォーマンスを楽しめる状況に一刻も早くなることを、願うばかりです。

 

コメントを残す