アンナ・ネトレプコへの期待 今聴くべきシンガーその②

アンナ・ネトレプコ = Opera Diva(オペラディーヴァ)

 

今聴くべきシンガーその②

今シーズンのメトロポリタンオペラハウスでトスカのロールデビューを飾ったアンナ・ネトレプコ。

本人はトスカはキャラ自体好きじゃないから歌わない、と言い続け、でも周囲は「絶対当たり役」と熱望しつづけた結果の待望のロールデビュー。完全ソールドアウトのハウスでのデビューは、どのメディアでも大好評。 お相手役のカヴァラドッシはピンチヒッターで入った夫のユシフさんで、またミーハー的な話題にもなりました(笑)。

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Met2018、大成功だったTosca.2幕目のVolle演じるスカルピアと。凄すぎる迫力!photo Ken Howard / Met Opera

私もレディースナイトの生徒の皆さんと、アンナちゃんのロールデビューを観ることができて、本当に感激。

でも何が素晴らしかったって、1幕目後半と2幕目のスカルピアとの掛け合い。ミヒャエル・フォレ演じるスカルピアはノーブルであり、めちゃ怖い(笑)。バロン(男爵)にふさわしい物腰…と思いきや、2幕目にはモラハラ、パワハラ、そして最後は欲情ほとばしりで、トスカの首を絞める程サイコパスぶりも発揮。彼との掛け合いで、アンナちゃんの本領発揮で本当にスリル/ドラマ満点の舞台でした。

興味深かったのは、アンナちゃんのトスカは、細部に今までに聴いたトスカとの違いがあったこと。

例えば、殆どの歴代のトスカがセリフのように叫ぶ、呟く箇所を、アンナちゃんはあえて歌ったり(あのラインに音符があったの?とラジオの解説者/批評家も別の機会に言ってた)、Emoting(-感情を大袈裟に出す-)のを避けて、自然に違和感ないドラマの表現が素晴らしかった。彼女は意外にも、力任せで歌ったり、感情だけで音楽を二の次にするアーティストではなく、実は思ったよりトラディショナルなんだわ、と面白い発見が多々ありました。でもやっぱり、ドラマの一瞬を描くのがめちゃくちゃ上手い!!

でも何が驚いたって、彼女の声、こんなに深かったっけ??

人間の声って面白いですね。

ただ、声のボリュームがあるので、それのコントロールがどうなのかな?と…個人的には「歌に生き、愛に生き」はもうちょっと繊細な出だしが好みですが…?

もう一つ「あれ?」と思ったのは、アンナちゃんとヨシフ夫婦の1幕目。本物の夫婦なんだから、きっと舞台上での相性もいいのかしら?との期待を思いっきり裏切ってくれて、なんのケミストリーなし(笑)。SNSで見せるプライベートは、仲良しのおしどり夫婦なのに、やっぱり舞台となると別なのでしょうか。

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3幕目、ダーリンのユシフ演じるカヴァラドッシと。やっぱりアッパーハンドのアンナちゃん。photo Sara Krulwich/The New York Times

舞台でのケミストリー(愛称)は、本物の夫婦より、アンナちゃんとミヒャエルさんの方にあったわけで(笑)舞台でお互いを高めあうアーティストって、これなのね!と思える瞬間でした。やっぱり、トスカはトスカとスカルピアの話なんだわ?

う~もう一度2幕目観たい!

アンナちゃんのダーリンのユシフ・エイヴァゾフは、41歳で若干の年下夫。でもオペラシンガーとしては、第2のキャリアなので(地質学者が最初のキャリア)、オペラシンガーとしてのプロ歴はアンナんちゃんの半分以下?なのかな。それが良くわかっちゃうのは、彼の舞台の印象が薄い事と、やっぱり歌唱力かも。

 

トスカまでの道のり(?)

私がアンナちゃんを初めて聴いたのは、Met 2004年(多分)のボエームで、彼女がムゼッタを歌ったとき。ボックス席に座っていたのだけれど、お隣のおじさんは大興奮していて、会場もブラバーの嵐。実は私はピンとこなかったのですよね。

すごく魅力的で、可愛くて、スタイル良くて、ムセッダそのものだったけど、何をよく覚えてるって、周囲がこんなに素晴らしいと評価しているのに、特になんとも思えなかった自分の耳に対してショックだったこと(笑)。

なので、その後メットでベルカントを歌ったり、格上げしてミミを歌ったりも、特に興味なくて見に行かなかったのだけれど、、、。

ルチアだっけ清教徒だっけも歌よりも転がってた記憶のほうが強いし(だから作品を覚えてない?)

↑ファンによるアンナちゃん@メットオペラダイジェスト版。でも今年のトスカは未だ入ってません。

ふ~んで終わってしまったいくつかの演目を得て、昨年のオネーギン。これは良かった。キャラ的には全然違うのに(笑)デリケートでいて素晴らしい表現力。(予定だったら亡ディミトリ・ホロフトフスキーと一緒に歌う究極のロシアンペアだったのに、本当に残念。)

Met 2017年のオネーギン。素晴らしかった手紙のシーン

レパートリーがどんどん重くなってきているアンナちゃんのトスカは、期待いっぱいだったから、1幕目の前半は空振りっぽくて残念だったけど、後半は大満足で、今後の期待が高まります。

来シーズンはその期待を煽るように、なんとAida。去年にザルツブルク音楽祭でムーティ様指揮によるアイーダで役デビュ-は、大成功だったようだし。

Verdiが大好きと本人は言っていたけど、アイーダは彼女が得意としていたトロバトーレやマクベス夫人とは違うので興味深いです。

逆に後半の演目の(新演出)アドリアーナ・ルクヴルールのほうがあってるのかも。

既にスカラ座で成功しているアドリアナ。Metでの大晦日のガラがプレミア

話題のDIVA

アーティストとして、注目度高いのはもちろんなのですが、色んなインタビューでど正直に答えて、話題になってしまう彼女でもあります。

あるインタビューで、「それぞれのオペラ作品の作曲家に会えたらどんな質問をしますか?」という問いに「会いたくないわ。どんな意図があって、どんなキャラクターを描いてほしいと思ってるとか、まったく聞きたくないわ。私は、自分で考えて自分の解釈で、そのキャラクターを演じたいの。」と答えてました(笑)。こういう返事は、なかなか聞かない。

こんな彼女と保守的(作曲家の意図だけ遂行する)ムーティ様と、どんなアイーダのリハーサルだったんだろう??

興味津々。

こんな感じだから、SNSでも人気の彼女。

カヴァラドッシ役を初演1週間前にキャンセルしたマルチェロ・アルヴァレズのキャンセルの理由やら、リハーサルの様子が知りたくて、最近彼女のインスタをフォローし始めたのですが、やっぱり相当飛んでる(笑)

メディアにもよく取り上げられているけれど、以前から彼女への政治的な批判は結構頻繁。

最近では、彼女の#metooへの意見は、また大反感を買っちゃう発言。

「*被害者と言われている人は、何らかの形で同意している。セクハラなんてないわよ、自分が希望しない限り。」とラジオ局のインタビューに答え、メディア炎上? アンナちゃん炎上インタビュー

一応その後、ツィッターで弁護なるものはしていたけど、本人はあまり気にしていないのでは。

あるインタビューでは、「私はとってもレイジーなの。だから譜面を勉強するのもあまり時間をかけないのよ。」と言っちゃうし。過去のレパートリーの栄光(?)に関しても「過去は過去だから、興味ないし、それを自慢する気もない。」

自分の発言も「過去」だから気にしないのでしょうね。

すっごくわがままで強そうな印象があるけれど、自分では「私はとってもスイートなのよ。」と言っちゃうところが面白い。確かに、同僚や後輩には、親しまれているよう。

何はともあれ、常にド派手ファッションで、チャーミングで話題性があって、強くて、才能があって、しっかりママしてて…

やっぱり興味深いシンガーです。

こんなのもSNSにあげて、面白い。アンナちゃんのメットオペラ インスタグラムTakeover

秋が楽しみ♡

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