トスカ Tosca メトロポリタンオペラの新演出

『トスカ』、メトロポリタン歌劇場の新プロダクションについて思うこと。

こんにちは。オペラオタク母のYokoです。

2017年の大みそか、ニューイヤーズイブGalaとして、曰く付き新プロダクションの『トスカ』がオープンしました。

主役のソニア・ヨンチェヴァさん

何故曰く付きかというと…知りたい方は、こちら

新プロダクションは古典的デザイン

多くのベテランメットファンに大顰蹙を買った?、シンプルでちょっとオゲツナイ前プロダクション(スイスの演出家、Luc Bondy監督)から一新して、今シーズンは、プッチーニが描いた1800年のローマに忠実なプロダクション。それぞれの場面(3シーン)の舞台は、ローマに今も実在する建物(サン・アンドレア教会、パラッゾ・ファルネーゼ、サン・アンジェロ城)で、セットは実際の建物を忠実に再現したという、、、

メトロポリタンオペラの新プロダクション「トスカ」 メトロポリタンオペラより

初めてトスカを歌う、今をトキメク✨若手ソプラノ、ソニア・ヨンコヴァさんと、今をトキメクトキメク✨若手テノールのビットリオ・グリゴロ君(彼もトスカは役デビュー)。大博打のような気もするのですが、めでたく、観客には大好評だったよう。?

私の義母も大晦日の初日ガラを観て、興奮気味に「今回でトスカは5回目ぐらいだけど、今までで一番良かったわ! トスカ役のソプラノ、最高‼!」と報告してきました。私は、舞台は観ずに、年末の大掃除をしながら生放送をイヤホンで聴いていたんですけど、義母とは微妙に違う感想が、、、

でもナマの舞台を観るのと、生放送を聴くのでは、印象が全く違いますよね。生放送で聴くのは、ビジュアルがない分、歌はもちろん、オケもしっかり細かい部分も聴きこめますから。ましてや、1日だけのパフォーマンスで、そのシンガーを判断するのも難しい…。

初日の批評(大手メディア)には、全体的には好意的に批評されていたにもかかわらず、ステージングはどっちかというと「セーフな感じ」、「古臭い」、「つまらん」と言った、否定的な批評もチラホラ。

シンガーについては、褒めつつも、これからもっと良くなるんでしょうね、的なニュアンスが多かったようです。

私は、An Introduction to the Opera の生徒の皆さんに、最初に予定されてたキャストのKristine Opolasisのよりも、後半のキャストであり、現在のトップDivaのアンナ・ネトラブコを聴いてほしくて、あえて、4月にレディースナイトを企画。(こちら1枚キャンセルが出ました。 満席です。ありがとうございます詳細はこちら!

でも、やっぱりソニアさんと、グリゴロ君が気になるので、(特にグリゴロ君は熱血だから、ステージで観るべきシンガー)、当日券を取って鑑賞。

この新キャストを、1月15日に10歳息子を、道連れに観てきました。

寒さに耐えて、行きました。行っちゃえば、結構楽しむ息子

ババっと、勝手な感想を書きだします。

ステージ:

なぜ斜め???ゆがんだ話だから、斜めのステージというのを新聞で読みましたが、、、、で、1幕目最後のテデウムの迫力が、コーラスの配置でなんか残念。もったいない。

カーテンコール。サンアンジェロ場。

シンガー:

ソニア・ヨンコヴァ(トスカ)は、素晴らしい声の持ち主。酔います、彼女の声は。コクがあって、マイルドで、、、、レガートは素晴らしい、、、、でもトスカとしては、サスペンスがまだ無いかも…。2幕目(スカルピアに襲われる)あの状況で、あんなに冷静ってのも?? いきなりアリアになる感じで、ドラマとしてちょっとシラっとしてしまった。彼女の一番の弱みは、お芝居がイマイチなところかしら。

トスカは、シンガーとしてはもちろん、女優としての才能も評価される、本当に難しい役です。歌う女優ナンバー1の故マリアカラスの当たり役というのは、本当に納得。今後期待です。

トスカ第2幕:メトロポリタンオペラより

ビットリオ・グリゴロ君(カヴァラドッシ):ソニアさんに対して、彼は本当にお芝居が熱い!熱血カヴァラドッシを本当に情熱的に演じて、でもアリアも繊細。声を張り上げるとき、背伸びするのが、ちょっとホセ・カレラスっぽくて気になるけど、パッションが空振りしないのが、彼のカリスマなんでしょうね。 終幕のアンコールのあいさつも、チャーミングで、周りの老若男女、みんな喜んでました(笑)

ジェリコ・ルチッチ(スカルピア役):うーん、、、声は良いんだけど、結構ジェントルマンのスカルピアでものたりない、、、

エマニュエル・ヴィヨーム(指揮)あんまりプッチーニを聴いてる気になれなかったのは、ドラマっていうより、甘い感じだったからかも。もっと突き刺さるようなスリルが欲しかった!彼はフランス人で、フランスオペラが得意らしいけれど、、、どーりで? 彼は、現在、ダラスオペラの音楽監督です。

カーテンコールのグリゴロ君のお茶目なこと(笑)。私の周りのアメリカ人マダムも、韓国人おじさんも、興奮でbravoを連呼!なんとこの後、このおじさん、カヴァラドッシのアリア「星は光りぬ」を歌い始めた・・・観客ハッピーで超ご機嫌^^

さて、

私のこんな感想と各メディアの批評合わせて、義母にお電話。

「…..シーン….」お気にめさなかったらしい(-_-;)

で、「こんなに美しいプロダクションをなんで褒めないのよ!!?あの卑劣な(Luc Bobdyの)プロダクションのオープニングを私は観たのよ!! Disgusting!あんなもの、二度と観たくない! スカルピアが娼婦に囲まれて、色々してるシーンなんて!!  それの方がいいって言うの????」????

いやー、そうは言ってないけど…(-_-;)

今回のプロダクションは、メット総支配人のピーター・ゲルブ氏が、「美しいものは(Luc Bondyの前のゼッフェリのデザイン)、そのままにすべきだったんですね。」と保守的な演出好みのシニア世代のパトロンとファンに負けた(?)結果でもあります。

そりゃあ、怖いわよね、シニアたち。義母もその保守的好きなシニアの一人!!(笑)

ゲルブ氏は、オペラハウスの新改革として、新しい解釈の演出=新しい観客の動員を目指して2006年に就任しました。HDでのライブビューイングも彼の先行的な画期的アイディアです。彼のシンガーの選択は、なんで~と思うときも多いけど、HDは画期的ですよね。

不評だったBondyのプロダクション。確かに教会っていうよりは、ジェイル?  メトリポリタンオペラより

私は、保守的ファンでもあるけれど、意外とLuc Bondyの演出、嫌いではなかったかも。改めて、ビデオで観てみると、アリアで歌われる内容と、その前のやりとりが納得いく演技や解釈で、ドラマ性をより高めていると思いました。スカルピアの卑劣さも良く出てるし、、、まあ、不必要な演出(スカルピアと娼婦)も確かにありましたが…

さて、道連れにされた我が10歳の息子、しっかり観てました(笑)。歴史的背景に興味を持ったようで、ナポレオンとか、その頃のヨーロッパとか、、、。ドラマチックなオーケストラはとても気に入ったようですが、「みんな死んじゃうのは好きじゃない。」そうです(笑)

しっかり観劇。緞帳は、トスカが使った殺人ナイフと十字架のイメージ?

トスカがスカルピアにレイプされそうになるシーンが、この演出では本当にマイルドだったから、あまりこの辺は細かく説明せずに済みました。

そう言えば…前作のLuc Bondyのプロダクション…ソンドラ・ラドヴァノスキー観たさに、当時15歳の娘を連れて行ったような。 あの時どこまで説明しかた記憶は定かではないけれど、きっと、ティーンの娘は女性は強くあるもの、と学んだに違いない…かな(笑)。

#metoo モーメントだわ、やっぱりこのオペラ…

ナイフを見つけるトスカ。歴代のDiva達。左はマリア・カラス

さて、総支配人ゲルブ氏が頑張っているライブHD、明日1月27日に、ライブでこのキャストの「トスカ」が観れます!

米国内での映画間探しはこちら。

アンコール上映もあるみたい。米国は1月31日です。

日本では、ちょっと遅れてこのライブを録音されたものが、松竹系で上演されます。こちらに詳細が載ってます。

是非ご覧になって、ご感想をお聞かせください。

因みに明日のマチネ(ライブ発信)は、このキャストの最終公演。すごい迫力が期待されますね。

 ここで、‘’曰く付き‘’の説明を、、、

曰く付きな理由:呪いのプロダクション??

先ず、今シーズンのスケジュールとキャストが発表された17年春には、イケメンでロブストな声で人気のドイツ人テノール、ヨナス・カフマンがカヴァラドッシ、そしてセクシーなソプラノ歌姫(というか女優さんみたい)な、クリスティーヌ・オポライスがトスカ、そしてSirの称号も持つ、超人気バリトンのブリン・ターフェルが極悪スカルピアという、オペラでありつつ非常に演劇性が高いToscaに期待のキャスト。指揮者は、クリスティーヌの元夫であり、ボストン交響楽団の音楽監督、今最も注目されている指揮者、アンドリス・ネルソンス。それじゃなくてもNY社交界とオペラファンに超人気のニューイヤーズガラなので、期待もプレッシャーも大。

しかし!スケジュールが発表された数週間後、カフマンが「家族を置いて長い旅は嫌だ。」と言い出しキャンセル、そして5月の50周年ガラで、トスカの有名アリア「歌に生き、愛に生き」を歌ったオポライスは批評家にめちゃくちゃ叩かれ、結局彼女もキャンセル。元妻がこきおろされたメットの舞台で指揮棒降るわけにはならぬと(と勝手に想像しました)、ネルソンスもキャンセル。で彼らの後に大抜擢されたのが、アツいグリゴロ君と、ソニア・ヨンチェヴァ。でもこの二人、トスカ歌うの初めて!!もうドキドキの配役(笑)。

さて、指揮は、困ったときは、お膝元へ。メット名誉指揮者、レヴァイン殿がバトンタッチ。メット首脳陣は、レヴァインさえいれば、オッケーでしょ、と思ったに違いない。でもでも、もう運が悪いというか、今までの悪事のツケが回ってきて、感謝祭明けにセクハラ、しかも未成年に対しての性的虐待がすっぱ抜かれて、退場。そして最後の望みのブリンも本番直前でドタキャン。

メットの長い歴史の中で、主要キャラクターが全員キャンセルしたのは、史上初めてだそうです。舞台監督のデイビット・マクヴィカー氏も、あまりの悪いニュース続きで、不眠症になり、彼も降板しようと何度か思ったとか(^^;)

やっぱり、生のエンターテーメントは最後まで、何が起こるかわからない!

こちらは、苦労のプロダクションについて詳しく書かれた NYタイムスの記事

やっぱり、大変、That’s entertainment ですね。

でもだから、やめれらない(笑)

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