新年、明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。
いつもなら、年末に今年のベスト9オペラなど、インスタであげるファンや批評家に倣って、私も個人感動の9作品をシェアするのですが、、、、
ご存じのように2020年は、3月2週目でメットはクローズ。
ヨーロッパも一瞬開いたけど、またクローズ(現時点では、ドイツ/オーストリア/パリは1月末まで、メットは9月)。
オンラインでは新作をたくさん観れてうれしいけど、そろそろ飽きてきたー!ってころにホリデーシーズン到達でした。
色々鑑賞した感想は多々あるのですが、とりあえず年末イベントのメットのNYEガラ後の業界(?)の騒ぎについて書きますね。
メットオペラ、ニューイヤーズイブガラ
Met OperaのNYEガラは、31日のny時間夕方から、ドイツの小さな劇場(Parktheater) で生配信で行われました。
キャストは、テノール2人(カマレナ、ポレンザーニ)に、ソプラノ2人(ヤンデ、ブルー)、のメットの新しいスターたち(ポレンザーニは他より長く歌ってるけど)。
伴奏は、ピアノと四重奏楽団。
ここが問題。
この四重奏は、ウィーンベースのVienna Morphing Quintet。
要するにメットは、自分たちのガラコンサートで、アウトソースしたんですね。
「自分たちの(オーケストラ)メンバーを使わず、安くて、メットとは全く関係ないミュージシャン(四重奏)をメトロポリタンオペラの名がつくコンサートで雇うなんて、信じがたい。これこそ我々(オケ)を馬鹿にしている!」
とオケのメンバー、そしてミュージシャンのユニオンも大憤慨。(米国音楽家組合代表NYC支部からの非難のプレスリリース)
これは、今回が初めてでなく、このMet Star Live In Concertシリーズでは、他の楽団をアウトソースしたのは、3(4?)度目とか。
思えば、彼らは以前、スター(アラーニャの時!)の選択でアウトソースされた楽団だけど、今回は、メット自ら選択、雇用した模様。
「コロナだから、仕方なく現地調達したんでしょ?」と思う方も多いはず。
いやー、でもこれが、なんとも、、、、
実際のガラ出演の4人のスターシンガーのうち、2人はアメリカ人で、ベースはNY近郊。
ということは、このアメリカ人シンガーたちは、このガラの為に、JFKから飛行機に飛び乗ってドイツまで行ったのですねー。
じゃあ、メットオーケストラから楽団員4人選んで同じ飛行機で一緒にドイツに行けちゃったわけでしょ?
うーん(-_-;)
その提案がメットからあったかどうかは?謎ですが…
メットオペラオーケストラ
メットオペラオーケストラは、世界最高の楽団と言われています。(ウィーンやスカラ座に続く?)
彼らは、20年3月のシャットダウンから、お給料はストップ。保険料だけ、メットが払っています。
先が見えない現在(9月に開く予定だけどどうなのか???)、メットのアドミニ対オーケストラの今後の話し合いは、決裂状態。
メットのオファー内容は、開幕後の大幅なバジェットカットを数年にわたり同意すれば、現時点で、組合(オケ、大道具など)メンバーに、週1500ドル(最高)支払う、といったもの。
(パッと聞くと、週1500ドルも貰えるの?って感じですが)
バジェットカット=コロナ前のお給料より30%カット。
ふざけんじゃない!!というのが、組合の返答(-_-;)
すべてがシャットダウンしたNY。殆どのメンバーが今までのような暮らしはできていない状況。
でもちょっと調べるとメットオペラの平均サラリーって、$19万ドル強なんですって。これって、2千万円近い(-_-;)
ヨーロッパの楽団員からしたら考えられない金額です。
まあ、アメリカはヨーロッパと必須生活費用がドーンと違うから、余り比べ物にはならないかもだけど。
なんか、微妙だわ、、、、もっとお給料少ない人もこの国にはいっぱいいるんだけどね。
自分のスタッフを先に考えろ!の意見
今回のガラのアウトソースについて、楽団員の意見。
まあ、当然ですよね。
でもこれ、今に始まったことじゃない、、、
お金以外のことでも、どうやらゲルプ氏率いるメットボードは、身近な人達より、名声尊重派、と思わせる行動が多いです。
数年前の、元メット音楽監督のジェームス・レヴァインの未成年へのセクハラ疑惑でも、見て見ぬふりを通し、メディアにすっぱ抜かれたら、突然レヴァイン解雇。(これについてはこちら)
どう考えても、同罪でしょう?ゲルブさん。
最近だと、世界のスター歌手、プロシド・ドミンゴのセクハラ疑惑で、コーラスメンバーからの苦情がでていたのに、ゲルブ氏はその声を無視。
無視しつつ、リハーサルを続け(マクベス)、コーラスメンバーがメディアに話してすっぱ抜かれたら…
初日当日の朝、突然ドミンゴ解雇… (これについては、こちら)
公に大声で指をさされなきゃ、自分たちのスタッフよりも有名人の肩を持つ、サイテーな雇い主のイメージなメットのリーダーのゲルブ氏。
一言では、白黒つけられない、経営状態だから彼の思考はわかるけど、これは同意はできかねない。
メットオペラの正しい判断?
今回の大晦日ガラは、11月に予定されていたハビエ・カマレナとプリティ・ヤンデのコンサートが延期され、大晦日のガラに変更されました。
でも二人じゃ寂しいから、アメリカ人プラス?って感じ。
エンジェル・ブルーはもともと、12月のクリスマスあたりに一人でNYでリサイタル予定だったんですよね。当初はオケと一緒にできれば、、、と言っていましたが。
マシューは、スケジュールに空きがあったから?(笑)
さて、個人的には、カマレナは嬉しいけど、先ず考えたいのは、この大晦日ガラ、このキャストで、しかもドイツでやるべきだったんでしょうか???
今回のキャスト
まず、メキシコ出身リリックテノール、ハビエ・カマレナ。
私も、私のオペラクラスの皆さんも大ファン。愛嬌のあるえくぼに、確実なる暖かい高音に、しっかりした男性的な低音は本当に観るのも、聴くのも楽しいシンガー。ベルカントお得意。(ハビエについては、こちら)
そしてそのお相手は、南アフリカ出身のコロラトゥーラソプラノ、プリティ・ヤンデ。当然の如くベルカントがお得意で、高音専門。(可もなく不可もなくですが(-_-;))
もう一人のテノールは、アメリカ人でNY郊外在住のリリックテノール、マヒュー・ポレンザーニ。彼もいつも安心できる歌唱で、オペラ講座の生徒さんに人気者。彼はベルカント系とモーツァルトがお得意。最近は、プッチーニのボエームも挑戦。
そしてソプラノ、エンジェル・ブルー。元ミスカリフォルニアの彼女は、Next Leontyne Priceと期待されています。(それは褒めすぎ)
エンジェルは、ボエームのミミ、トラビアータのヴィオレッタ(これはスカラ座)そして前シーズンはガーシュインの『ポギーとベス』で大好評を得ました。
アメリカ人シンガー2人は、ニューヨーク近郊在住。
ハビエは、スイス在住で、プリティはどこだ?多分ヨーロッパ。
前述したとおり、最初の予定は、11月にハビエとプリティのコンサートINドイツ?オーストリア?
彼らの住む近所(笑)これは、わかる。
でも、コロナの第2波で、延長になって、じゃあ、他にもシンガー加えて大晦日ガラにしよーとなったわけだけど。
大晦日のガラ、彼らでなくてもよいでしょ???
思うこと
ドイツもオーストリアも、コロナの陽性者がまた一段と増し、劇場はクローズ。でもこれらの国は、政府の援助もあり、無観客で公演し、それを配信したり、とにかく各カンパニーの団員が働ける機会を作り、お給料も払っています。
もちろん政府の援助がほとんど無い米国とは比べられないけど、ガラという名のもとにお金を集める舞台であれば、米国人ほどジェネラスな人はいないんじゃないかと思うんですよね。
で、それを海外でやるより、地元NYでやれる可能性はなかったのかと。
NYCは、大ヒンシュクな勘違い市長が、なーんのヘルプもしないどころか、ビジネス再開を妨げ、邪魔。そしてガバナーは、芸術には無関心の模様、、、、
でもでも、芸術はNYのベースなのに。
州も市も現在赤字なので(これはもう一言で語れない米国の政治状況が大きく関係していて…)援助ができない。(でも前から大してなかったよね)
じゃあ、経済的援助が無理なら、安全に少人数でコンサートができる配慮が市にはできなかったんでしょうかね?
それが無理なら、だいぶ普通にビジネスしている他州(テキサスとか)でやるとか。アメリカ人アーティスト呼んで。
[あ、でも普通にビジネスしている(オープンしている)州は、共和党だから、来れないのかな?ここも政治がかかわっている。。。。この辺の考察も書くと長い😅)
個人的には、マイケル・スパイアーズ、グレゴリー・クンデ、ソンドラ・ラドヴァノスキー(カナダ在住だけど)、ジャーミー・バートン、あ、、、これでもうベルカントできるわ(笑)男性低音いないけど。(ほんとは、リセッタ・オロペーサもスペインから戻ったら加わってほしい。)ら、アメリカーンなシンガーでガラも👍
ついでにサミュエル・ラミーにも引退から出てきていただいて、、、、(笑)
12月の初めにミラノのスカラ座が、シーズンオープニング(本来ならランメルモールのルチアだった)を急遽ガラコンサートにして、無観客で全世界に配信がしました。
スカラ座にふさわしい国際的スターが出演。でも、音楽監督のリカルド・シャリーの指揮とスカラ座楽団、コーラスも参加、バレエもあって、ミラノにあるスカラ座という、コミュニティ感いっぱい。
オープニングとクロージングはミラノの夜景。
始まりは、スカラ座のお掃除の女性が舞台をモップで拭きながら、国家を歌うシーンから。
演出感いっぱいだけど、これ見たら、イタリア人/イタリア在住人は感動しますよね。
メットは全く反対のアプローチ。
公演の舞台はドイツだから、メットやNYのショットは皆無。
そして選曲。。。
大晦日のガラでは、シンガー得意のアリアやデュエットの後は、なぜかオペレッタの重唱。(大晦日だから、って理由はあるけど)
そしてもっと不思議なのは、ナポリタンソング。
「O sole Mio」 に「帰れソレントへ」
ここイタリアじゃないよね?
ソレントに戻りたい、ふるさと万歳ソング、なぜ?????
これ、ここでNew York New Yorkを歌うべきじゃない??
ゲルブ氏の使命は彼も自分で言ってたけど、「お金を集めること」
だから、とにかくお金につながる企画、お金を確保、セーブできることが第1で、勿論芸術水準は保って、アメリカンハウスというより、インターナショナルハウスってのを保ってるのはわかる。
でも、今だからこそ、ローカルにアプローチするべきじゃないかしら。
自国のサポーターに共感と一体感を与えるアプローチ。
外ばっかり見るのって、、、、、残念。
追記:
この騒ぎで、マズイと思ったか、メット音楽監督のヤニック君が、メットオーケストラとコーラスのためにマッチングファンド(人々が寄付した同じ額を自分も寄付する)を始めました。
各グループ上限25000ドル、マッチングするそうです。合計5万ドル。
えらい!素晴らしい!という声と、やっと???という声と混じっています。
音楽監督といえど、彼らはフリーランスなので、他の楽団とも掛け持ちして、しっかり楽団員と違い、自由があって稼ぎも違うから、まあ5万ドルは余裕があるんでしょうね。