メットオペラの配役について思うこと

メトロポリタン・オペラの2019~2020シーズンが先月発表されました。

ざざっと見た私のリアクションは、つまんなーい・・(# ゚Д゚)。

現代物が多い?ベルカントが相変わらず少ないというのもあるけど、配役がつまらない、、、というのが一番の理由かも。

おお!観たい!聴きたい!

と心の底から思わせてくれるシンガーが、数人しかブックされていないのです。(大好きなソンドラは出ない?)

これって、私が好みで感じる不満なのかな、と思えば、どうやら違うよう。SNSのメットのページにも不満不服のコメントがタラタラ?

「何故XXが出ないの?」、

「なんでXXXがでるんだ!」

「彼(彼女)は、このあいだの●●●がサイテーだったでしょー!。」

とか、読みながら頷いてしまうコメントがいっぱい。

配役の時期

メジャーオペラハウスのキャスティングは、5年前に決めるのが最近のお約束になっているそうです。青田刈りという言うか、先物取引というか…

まあ、シンガーにしてもオペラハウスにしても、ギャンブルそのものです。

声は育つもの。シンガーは、体が楽器なので、色んな訓練をしながら、声を育てていきます。でもそれは高速で育てる事は出来ず、時間もかかる。それを見越して、今はモーツァルトなどの軽めの役を歌ってるけど、数年後には、ヴェルディなどの重めの役が歌えるはず…とコントラクトは交わされます。

シンガーは、もちろん将来の予定が入っている方がよいし、オペラハウスも、お客を集められる人気シンガーはもちろん、将来大物になるであろうシンガーは、早めに取り込んでおきたい。

でもすべてが予定通りなんてことは、無いパターンも多々。

そこで、コントラクト破棄が起こるのですが、まあそれは仕方がない事。「私の声が、この役には未だ未だだわ。」と。でも、本人が恐れてか、周り(エージェント)の意思か、コントラクトを破棄できず、無理をしてしまうシンガーも沢山います。その結果、声帯がダメージを受け、それが半永久的になり、シンガーのキャリアを台無しにしてしまうパターンも。(*この話題について興味深い英国の記事はこちら。ちょっと古いですが。)

可哀想(?)な例?

今シーズン秋のアイーダのラダメスを歌った、アレクサンダー・アントネンコは、ちょっと可哀想な例。彼のラダメスは本当に酷かった?。ピッチ外れてるし、音程も??だし。別のオペラ歌ってる?って感じって感じ?

しかもあの時の『アイーダ』は、今世紀最高のアイーダと言われるほど、素晴らしい女性陣だったので、彼の不調さが、よけい目立って? 初日に観に行った私達は、ブーイングの嵐にまたもや驚いた~。

アントネンコは、未だ43歳で、ドラマティックテノール(テノールでもたくましい声、重くて低音が得意:オテロ、サムソン、カラフ、ラダメス)なら今がどんどん旬になっているはずなのに…

*今調べたら、彼は32歳にして、ザルツブルクで初めてオテロを歌ったらしい。若過ぎる!

そして彼は、今月演じられた、『サムソンとデリラ』の主役サムソン。デリラ役のアニータ・ ラチヴェリシュヴィリ の評判は最高なのに、アントネコが歌うサムソンは観たくない、、、なんてファンも多く、チケットの売れ行きは⤵。

そして初日、、、、もともと声帯がずっと不調だったのに、風邪もひいていたらしいアントネンコは、声を張り上げつつも、ぜーぜー状態での歌唱。1幕目の途中で退場するか?と思うほど、舞台脇によりながら幕を終えました?

案の定2幕目の開始前にアナウンスがあり、急遽のキャストチェンジ。

アナウンス「ミスター・アントネンコは風邪のため不調で続けられません。」     

客席「オー(やっぱりね。でもずーっと不調だよねえ…)」

アナウンス「2幕目からのサムソンは、グレゴリー・クンデ氏が歌います!」

客席「ウォォォォ~!!!!!!!(客席歓喜の嵐???) 」

意外だけど大正解な救世主?!

ピンチヒッターで歌ったグレゴリー・クンデは、なんと65歳のアメリカ人のベテランテノール。もともとベルカントテノールとして高音Cはもちろん、驚異の高音Eだか、Fをだして、観客を興奮のるつぼに巻き込んだ人。でもなぜか、母国のアメリカでは、あまり活躍する機会がなく、メットでの出演は数えるほど。

後に、イタリアやスペインのオペラハウスで、著名は指揮者にすすめられて、Verdiのオペラを歌い、今はオテロやカラフを歌うドラマティックテノールとして大活躍している…..でも、ヨーロッパで?

クンデ氏のご自宅(笑)は、NY州の北のロチェスター。なのにアメリカで歌う機会は本当に少ない。本人はもっとアメリカで歌いたいって言ってるのに、、、

今回のメットの『サムソンとデリラ』をクンデ様(この場合、様よね)救えたのは、その1週間前に、彼がダラスオペラでマノンレスコーを歌うために帰米していたから。

ラッキーな(観客)なアンラッキー(アントネンコ)で、ラッキーな大成功を収めたメットオペラ。

批評は素晴らしくて、メットもそれを最大利用して、3幕目のクンデ様の(なぜかあんまり歌ってない)ビデオをマーケティングVideoとしてガンガンだしてるけど。

そしてこの自画自賛のようなメットのステートメント!!

で思うのは、来シーズンのキャスティング。可哀想なアントネコは、来シーズンもヘビー級の役、チャイコフスキーの『スペードの女王』の配役。巷では、クンデ様は、『スペードの女王』歌えるかな~なんて声も? (これはアントネンコの方が適役?)

私は、クンデ様にTurandot(のカラフ)を歌ってほしいわ~。今から神頼みすれば、叶うかしら(笑)。

クンデ様情報

♡日本の皆様、この秋、英国ロイヤルオペラハウスの来日公演と共に、クンデ様が来日しますね。なんとVerdiの『オテロ』を歌うそう。羨ましい限りです。

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