ライブ配信でオペラ体験
ヘンデルのオペラ『アグリッピーナ』
自宅で憩いながら、ワールドクラスのオペラハウスからの生中継(生配信)のオペラを観たことありますか?
私は、今このブログを書きながら、バイエルン国立歌劇場からの生配信で、ヘンデルの『アグリッピーナ』を観ています。
ちょうど、一幕目が終わり、25分の休憩時間。
スマートフォンでバイエルン国立歌劇場TVのサイトから配信されるものを、アップルTVを使ってテレビの大画面で観ています。
主役のアグリッピーナは、ローマ皇帝グラウディウスの後妻で、連れ子のネローネ(後の皇帝ネロ)の野心家ママ。実際の歴史を題材に描かれた台本、もちろんオペラ用に登場人物は省略され、ドラマ性を高めていますが、このオペラの面白いところは、登場人物、特に主役のアグリッピーナと殆どの男性の興味を引く美しいポッペア。
このオペラは、ほとんどの有名オペラにありがちな、悲劇のプリマドンナが全くいません。
やり手の女性二人(アグリッピーナ、ポッペア)を中心に、タイトルはありながらも、翻弄され、手のひらで転がされる男性たち(笑)。
まあ、史上の強い女性は、悪妻だの悪女だの言われて、(これが男性なら、ただの権力者で終わるのに。)体裁は、良くない響きですが、何と言っても、強い。
こういう題材が、ヘンデルの時代(バロック時代、初演1709年)にウケてたというのは、面白い事実ですよね。
なんというか、今の時代にタイムリーというか、、、
バイエルン国立歌劇場のオフィシャルツィッターのコメントが面白すぎる!
このパフォーマンスは、本日(7月29日)から2週間バイエルン国立歌劇場のHPにある国立歌劇場TVで観ることができます。
こちらから→Staatoper TV
古典オペラとモダン演出
普段はモダンな演出は好みでない私ですが、これはすごくよかったし、納得でした。
バロックオペラって、バロック芸術(対比法)と一緒で、リピートが多い。コーラスもない(アンサンブル)。
Verdiのようにドラマでぐいぐい引っ張っていく、って感はなく、アリア中心。アリアは、ドラマの進行にはあまり関係なく、個人の心情を歌うもの。ストーリーの展開は、全てレチタティーボで進められます。だから、斬新な演出でこそ楽しめたりもするのかも。
多分こんな理由で、ヘンデルのオペラが上演される場合、トラディショナルな演出(ローマ時代、ギリシア時代など)よりも、モダンで趣向を凝らした演出が多いです。
今回の演出は、オーストラリア出身の演出家、Barrie Koskyの作品。彼の演出は、いつも斬新で、????的な演出も多々(ロイヤルオペラのカルメン:ゴリラのぬいぐるみを着たカルメン?)。でもオペラによっては、納得できちゃう超クリエィテブな演出もあって(魔笛)、興味深い演出家です。
特に、1幕目のネローネが客席で、観客とインタラクトしながらのレチタティーボ&アリアは、面白い!
まるでギリシャ劇を彷彿させるような感じで、これは、観客は喜ぶわ~。
こんな演出だったら、(後の皇帝ネロの若かりし頃は、マザコンのパンク野郎で情けなかった設定(笑))、普段オペラって堅苦しいと思っている人々にも、受け入れやすいかも。
メトロポリタンオペラでも上演。
キャストが違って、演出家も異なれば、全く違う印象のオペラに変身?!
来シーズンのメットオペラでも同作品が上演されます。主役のアグリッピーナは、メットお気に入り、人気アメリカンメゾのジョイス・ディナート。演出は、手堅いダイレクションで欧米で人気の英国人演出家のデビット・マクギバー。きっとコスキー氏よりも、無難だと思います。
しかも、配役が全く異なり、、、、バイエルン国立歌劇場は、ネローネがカウンターテノール(の星!フランコ・ファジョーッリ)だったけれど、メットは、メゾ、、、。
さて、どうなるんでしょうね。
ちなみに、メットのアグリッピーナは、メットのライブビューとして、日本でも映画館で上演されます(来年)。
でも、このバイエルン国立歌劇場のアグリッピーナは、無料配信なんですよね。
この辺が、国の援助を受けてるオペラハウスの強みなのかしら。
ちなみに、コスキー氏のカルメンも、この間YouTubeのROHチャンネルで、生配信されました。
現在でも見ることができます。(まあ、お薦めの演出ではないけど?)
ROHチャンネルでは、2週間前に生配信された、ジョン・エリオット・ガーデナー指揮のフィガロの結婚も鑑賞できます(8月8日まで)。他には、バレエのリハーサルも見れますよ~。
本当に便利になりましたね。自宅で、コーヒーやワインを楽しみながら、オペラの生配信。
モチロン、実際にオペラハウスに足を運んで、ナマの声を聴いて、どっぷり音楽に浸るのがベストですが、、、、
メットだけでなく、世界中のオペラファンのお話を是非聞きたいです!