映画館で観る『愛の妙薬』★メトロポリタンオペラのライブHD 

映画館で観るオペラ 

今週末は、映画館でオペラ『愛の妙薬』を親子で楽しんできた、オペラオタク母です。こんにちは。

ライブHDのチラシと年間スケジュール(必須)

♬メトロポリタンオペラのHDライブ♬ 

【ただの生中継ではない!】

2006年から始まったメトロポリタンオペラのHDライブ、NYに住んでいるのに、Metを映画館で観るって、本当のところ「どうなの?」と常に思っていたし、人によっては音質が云々と言われていたので躊躇していました。

去年のクリスマスあたりに、フンパーティングの『ヘンゼルとグレーテル』を今年も観たい!と息子にねだられ、でも去年から、NYとテキサスを往復する生活が始まったので、思うように子供を連れていけない、、、。さて、どうしよう、、、と思っていたら、たまたま『ヘンゼルとグレーテル』のアンコール上映が映画館で上映されるのを発見。これはラッキーと(このプロダクションは、既に何度も観たし、おまけにアンコール上映はチケットも安い)特に期待せずDVDを大画面で観るノリで映画館に。

…と、これが、本当に面白い。カメラワークが最高なんですね。カメラは、ただ単にステージの前に設定されているだけでなく、ステージ上手、下手、上、裏、もう色々。序曲(素晴らしい序曲です)の時は、指揮者がアップでみれるし(ハウスにいると、指揮者の背後のみ)、緞帳の後ろでシンガーがステージの立ち位置を確認しながら、幕が開くのを待っている場も観れたり。(既にご存知の方、すみません、今更)

幕間はもちろん、シーンが変わるときの裏方さんの仕事ぶり、エキストラやコーラスの動きなど、客席からは全く見れない興味深い映像が楽しめるんです。

もちろん、実際の舞台では、シンガーの表情も、セットも良く見えるし、子供と行くには、最高です。

メトロポリタンオペラのライブHDは日本でも松竹系の映画館で、「Metライブビューイング」として人気のようですね。

ただ日本では、生中継ではなく、時差の関係や、字幕などのアレンジで、4週間以上遅れて上演されるようです。(と言ってもオペラの字幕は既にできあがってるのに、、、)

ドニゼッティの『愛の妙薬』

ドニゼッティの『愛の妙薬』は、ベルカントのコメディオペラ。主役のネモリーノ(テノール)のアリア、「人知れず涙」は、パバロッティの18番でもあり、とっても有名です。私の初めての『愛の妙薬』は、1992年、英国ロイヤルオペラででした。永遠のリリックテノール、アルフレッド・クラウスと、コロラトゥーラパワーハウスのスミ・ジョー。なんと素晴らしいキャストだったのでしょう。(余:この時の指揮が、なんと1週間前にAustin Operaの音楽監督をセクハラの容疑で解雇されたRichard Buckly氏のデビューだった!)

1992年のロイヤルオペラのパンフレット
1992年のロイヤルオペラのパンフレット

 

アルフレッド・クラウスは、本当に声を大切にしていて、自分に合わないレパートリーは頑として歌わず、若々しいリリックさを保っていたんですよね。1927年生まれの彼は、当時67歳。ネモリーノの役って、結構出ずっぱりで、重唱も沢山。67歳で、それを本当に美しい声で歌えるって、すごい。彼も大好きなシンガーの一人。 クラウスの事と彼の声をキープするモットーは、シンガーのレパートリーを私達ファンが学ぶのに、とても面白い題材なんだけど、これはまたの機会に。

 

さて、映画館へ、、、

で‼メトロポリタンハウスの『愛の妙薬』、これは行って正解でした。このプロダクションも実は躊躇していたんですよねー。なぜかというと、まずストーリーが特に今気になるわけでなく、演出もすごく普通。あとキャスト。主役のマヒュー・ポレンザーニに全く期待してなかったのと、新星と言われる、ソプラノのプリティ・インデェもどうかなーと。マヒューは、何度も舞台で聴いてるんだけど、印象が薄い。後から、プログラムを見て、「あー彼だったんだ。」って言うのが多過ぎ(笑)

一番最近彼を観た(聴いた)のは、モーツアルトのイドメネオで、がっかりだったし、なので、どーせ可もなく不可もななんだろうな~と思って。プリティは、CDのプロモでしらしらTVに出てて、その時のあまりにも装飾的なUna voce poco faを聴いて、興味が萎えてしまい….

でも、息子もコメディは興味があって観てみたいというので、(このあいだのトスカが悲劇で、あまり好きでなかった)行ってきました。

 l'elisir d'amore from Metropolitan Opera house
l’elisir d’amore from Metropolitan Opera house

結果は….いやー、マヒュー・ポレンザーニ、素晴らしかったです。歌いこなれてるんだけど、歌い方が正直な感じで、役にぴったり。お芝居もフレッシュで、とにかく間がうまい。彼は、この手のコメディは、ぴったりだと思いました。ベルカントは、本当にに声に合ってるし、特にセリアよりもコメディが?。聴きどころの「人知れず涙」は、観客が構えてるのもわかるだろうから、さそがしプレッシャーだろうと、聴いてる方がドキドキしたけど、心配無用。口を開いた最初の音から、最後まで、完璧でした。これはメットのリハーサル 

プリティは、前半はなんだかイマイチだったけど、後半に入ってから、調子が良くなってきたような。確かに声は本当に綺麗。高音もよく出るし、きっと声帯が強いんでしょうね。役的には、明るくって、強くって、ハマり役のような気もするのですが…どうだろう。何かがイマイチ。ピッチがなんかずれるのが気になったのと、お芝居の間もイマイチ。言葉に感情があんまりない感じもする。彼女のインタビューを後で見たら、彼女が初めてオペラに出会ったのは、2001年で、ブリティッシュエアウェイズのCMで使われた、ラクメのフラワーソングだったとか!その後、オペラに興味をもって、勉強し始め、ドミンゴ主催のコンクールにも優勝し、メット、スカラ、パリ、ウィーンとメジャーハウスデビューをあっという間に、叶えてしまった彼女。超特急でのサクセスストーリーだけど、超特急過ぎるのかしら。きっと、もう数年すれば今あれ?っと思わせるところも克服して、素晴らしいアーティストになるんでしょうね。

終幕後

初めから期待していた、ドルカマーレ役のイルデブランド・ダルカンジェロは、本当に素晴らしい声で、この役も慣れっこ。ただ慣れっこ過ぎて、フレッシュさがなくなってしまった(-_-;)のは残念。このビデオは2005年の彼の最高のドルカマーレ!

今回のメットデビューはベルコーレ役のダヴィデ・ルチアーノ(バリトン)と、指揮者のドミンゴ・インドヤーン。ベルコーレのオープニングは、その演出があまりにも゜セクハラ’過ぎて、(現代、特に今に不適当‼ )、声も、技術も良い本来のダヴィデさんがかすんでしまった!アディーナの胸やら腰を触ったり、しまいには、彼女のスカートを上げて手を入れようとしり。それを笑って交わすアディーナは、後に(ネモリーノにシットさせしょうという理由であっても)婚約するんだから、もっと別の”横柄でうぬぼれているベルコーレ”の演出方があったんじゃないかと思いつつ、なんだか声に集中できませんでした。

ドミンゴ・インドヤーンは、今を時めくソプラノのソニア・ヨンコヴァのご主人。さっくりまとめていたけれど、彼の本来の才能が出し切れてなかったかも。

幕間に、キャストと指揮者へインタビューがあるんだけど、その時に、彼が、ドニゼッティのコメディにあるロッシーニ独特の早口言葉について熱くなって語っている途中で、インタビューアーのスザンナ・フィリップによってカットされてしまった? もっと聞きたかったし、お聴きしたかったわ~。

肝心の音のクオリティーは、劇場によるんでしょうね。ベストでは、やっぱりありませんが、、、

アメリカでは、明日のバレンタインデーにアンコール上映されるし、メットでも明日(14日)と㏰で最終日。

日本で上映は、3月3日から始まるようですね。(松竹サイト) 

お子様にもお薦めですよ~!

さて、うちの息子ですが、「実際(のハウス)よりも、映画館のほうが良く見えていい!」と……(苦笑】。で、次回は予告で観た、モーツアルトの『コシ・ファン・トゥッテ』に行きたいそうな。これ~、子供に説明するの、大変なんだけど~?

 

♬おまけ

このブログを書きながら、良いクリップや、新しいレコーディングを探していて、やっぱり基本(笑)に戻って、パヴァロッティ(&サザランド、ボニング指揮)の全曲盤を聴いてたら、あまりのパバロッティのすばらしさに、眠れなくなってしまった…アディーナ役のサザランドは、硬い、、、です。

Donizetti: L'Elisir d'Amore

このオペラは、初めて見た後に、このアルバムを買って、常に流していたほど、聴き易いオペラです。 アリアよりも重唱のほうが、好きかも。特にネモリーノとドルカマーレの重唱は、最高。

幾つかビデオを見つけたので、シェアします。

どれがお好み?

① 今回のメットで歌った、ダルカンジェロとローランド・ビリャソン *ビリャソンのネモリーノが、Mr.ビーンズに見える(^^;) こちら

② フランシスコ・アライサのネモリーノとブッフォ役を楽しんでるローランド・パネライ *アライサはベルカントテナーではないけれど、表情が最高。パネライもおじいちゃんだけど、やっぱり間が素晴らしい。こちら

③ これは、ロベルト・アラーニャがなかな笑える。この時は、アディーナ役のギオルクとまだ結婚したて頃で、後々のクレイジーぶりがない絶好調時代。 こちら

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