今日、6月2日のメトロポリタンオペラの無料配信『カルメン』の配信、ご覧になっていますか?
カルメンは、ドラマチックで悲劇だけど、音楽があまりにも有名なので、内容は映画だとR指定になりそうだけど、オペラでは、演出にもよりますが、子供でも楽しめます。
*メットの演出は大丈夫。でもヨーロッパ(スペイン、パリ、ウィーン)のCalixto Bieitoの演出は、絶対R指定なので、子供には、お勧めできません💦 初心者にもちょっと…
さて、明日6/3の『連帯の娘』は、だれでも安心して観れるコメディオペラです。
恋愛、友情、家族愛にあふれる、コメディ。
素晴らしいアリアも満載で、またしても演出が細かい!
ビジュアルも思いっきり楽しめます。
いつものように、メットの無料配信は、現地時間7時半から23時間鑑賞できます。
Met Opera Homeページのメインスライドの右下欄、Nightly stream欄をNY時間19時半にクリックこちらから。
イチ押しシンガー
連帯の娘は、マリー役のソプラノが主役ですが、今回のプロダクションの話題をさらったのは、トニオ役のハビエ・カマレナ。
本ブログでも、度々紹介しています。(ハビエの『清教徒』の感想はこちら)
私も大ファンで、オペラクラスの生徒さんも、このオペラ以来彼の大ファンに。
彼はメトロポリタンオペラでアンコールが許可されている数少ないシンガーです。
(現在許されているシンガーは、カマレナ君と、ファンディエゴ・フローレスのみ。過去はパヴァロッティ)
今回のランでは、上演すべての回でアンコールに答えました。
私は、実は2回?3回ぐらいみたのですが、毎回アンコールに答える彼を心配しちゃったけど、本人によると、無理はしてないそうです。
『La Fille du Régiment 連帯の娘 』簡単荒筋
チロル地方の村
ナポレオン戦争の渦中。
孤児のマリーは、赤ん坊の時に、フランス軍21隊に拾われ、可愛がられて育った、天真爛漫で、ちょっと粗々しい女の子。隊員全員がお父さん替わりのマリーは、隊の酒保で働き、隊員のお世話をしつつも、本当は戦場に出たい、心は生粋のソルジャー。
「最近、一人で散歩に行ったりして、敵であるチロル人と話したりしてるんだって?」と軍曹のシェルピスにとがめらる。そのうえシェルピスが、「お前は、第21連隊の隊員と結婚するって約束したよね。」と正され、不貞腐れてその場を去る。それと入れ替わりに、隊員たちが、陣営をウロついていたチロル人のトニオを「スパイだ!」と捕えてきた。マリーが騒ぎを聞きつけ、「崖っぷちに咲く美しい花を摘もうとして、落ちそうになった私を助けてくれた人なの!」と説明。可愛い娘の命の恩人なら、と一応許す隊員達。うまい具合に二人きりになったマリーとトニオは、お互いの想いを確認するが、隊員たちは、「マリーは軍人(しかも自分たちの隊員)としか結婚しない!」とトニオを追い出す。
一人になったシェルピスの元へ、ベルケンフィールド侯爵夫人と執事のオルタンシウスが、城にもどる護衛を求めにやってくる。話しているうちに、シェルピスと侯爵夫人は、共通の知り合い(大尉)がいることに気づき、夫人はその大尉と自分の妹にできた赤ん坊は戦火の中、死んでしまったと嘆くが、シェルピスは、「生きてますよ!」とマリーの生い立ちを説明。 その娘は、ベルケンフィールド侯爵家の唯一の跡取りと、夫人は大喜び。すると、男のように軍人歩きしながら、大声でシェルピスを呼ぶマリーを見て、仰天。これはすぐに自分が引き取り、淑女教育を!とマリーを城に連れ帰そうとする。びっくりするマリーだが、亡き父親(大尉)からの手紙を読み(シェルピスがずっと持っていた)、渋々同意して、支度の為に去る。
入れ替わりに、フランス軍の軍服を着た、トニオが嬉しそうにマーチしながら登場(めでたいヤツ(笑))。隊員たちに、「僕もあなたたちの仲間になった。なので、マリーと結婚させてください。」と育ての父親たちに許しを請う。
ダメだ、ダメだと拒否する彼らも、トニオが二人は相思相愛と説明するので、結局承諾し、トニオは超ハッピー。
嬉しい知らせをマリーに伝えようとするトニオに、マリーは、泣きながら、陣営を去り、産みの父親の望み通り、家族と暮らすと言う。トニオは、ついていこうとするが、「お前は軍人としての役割があるだろう!ダメだ!」と引き離され、「マリー必ず迎えにいくよ!」と叫ぶ。
数か月後、ベルケンフィールド侯爵家の城。
毎日の淑女教育にウンザリしているマリーを、ケガの為退役し、ベルケンフィールド家で働くシェルピスに慰められる。侯爵夫人は、マリーをバイエルン名家クラッケントルプ公爵家の甥と結婚させるつもりで、マリーの作法、教養と猛特訓。
ホームシック(軍隊のホームシック)なマリーは、歌のレッスンの最中に、イタリア歌曲がいつのまにか、軍歌を歌い始め、侯爵夫人も、マリーもシェルピスもみんなアンハッピー。
一人になったマリーは、トニオと隊員たちを懐かしんでいると、聞き覚えのあるマーチの音が。出世したトニオに率いられた第21隊が、マリー救出にやってきたのだ。再開を喜んでいるところに侯爵夫人が現れ、トニオに去るように命じるが、トニオは、「マリーを愛しているんです。」と懇願。それも許さず、トニオを追っ払た夫人は、シェルピスに「実は、マリーは私の娘なの。」と告白し、クラッケントルプ家の甥っ子との結婚をマリーに承諾させてほしい、と頼む。事情を知ったマリーは、「お母様の為なら」と結婚を承諾する。
結婚承諾書をサインするパーティに人々が集まり、マリーがサインしようとすると、トニオが戦車と共に乗り込んでくる。いったい何事?と騒ぐ客人に、マリーは自らの生い立ちを語り、自分は軍人に育てられ、酒保で働いていたこと、そして、実母の希望を尊重してクラッケントルプ家の甥っ子と結婚をすると語る。マリーに言葉に心を打たれた侯爵夫人は、マリーとトニオとの結婚を認め、隊員達もつめかけ、みんな大喜びで VivaFrance!と歌い幕。
マメ知識
- 『連帯の娘』の作曲家は、ガエターノ・ドニゼッティ
- パリのオペラコミック座に依頼されて本オペラ作曲。ので、フランス語が原語です。
- コミック座は、コミカルなオペラではなく、字のセリフがあるオペラ(カルメンも)が上演される。
- のちにイタリア語版もつくられた。
- 聴き所のテノールのアリア「友よ。。。」は、高音を得意とするリリックテノールの総本山ともいわれる。
- この曲は、パヴァロッティが最高💛
- クラッケントルプ公爵夫人は、歌わない役。リタイアした大物シンガーから、有名役者、コメディアンから政治家まで、色々な人がこの役でオペラ出演しました。有名な公爵夫人役は、大のオペラファンで、去年亡くなったRGB(Ruth Bader Ginsburg)。
それでは、恒例の勝手な感想です。 今回は、聴き所、見所と、キャストの欄に、勝手な感想を交えました。
聴き所・見どころ
ローレン・ペリー演出のこのプロダクションは、シンプルだけど、とってもセンスの良いセットと、細かい演技で、音楽は勿論、お芝居の要素も100分楽しめます。
演技指導に答えて、それぞれの役をコミカルに演じながら、最高の歌を披露してくれるシンガー達には、本当に圧巻。何度も見ても幸せな気分にしてくれるプロダクションです。
気分がダウンの時に、聴きたい、観たいオペラ(この演出で!)。
① 最初に書いたように、一番有名なアリアは、1幕目で、トニオが入隊して、お父さんたちに、マリーとの結婚の許可を求め(アリア前半)、受け入れてもらって、「夫となり、軍人となる」と歓喜して歌う後半に高音Cが9つ続くアリア、友よ、Ah ! mes amis, quel jour de fête !。
これは、後半の高音の個所になると、観客一同が、かたずを飲んで見守ってる感があって、観てる方が緊張しちゃいます(笑)
でも、オペラは高音だけが注目点じゃないので、初めからじっくり聞いて欲しいアリアです。
ハビエの表情と演技に対する、お父さんたち(隊員)のリアクションも最高。
② 私のお気に入りは、やっぱり1幕目に、マリーが隊員たちにせがまれて歌う〈連隊の歌〉「誰もが知っている、誰もが口にする」(Chacun le sait, chacun le dit)
特に、この演出では、マリーが選択バケツの上に立ち歌い、それに合わせて隊員たちが、手で決まった振りをしていて、それに混ざろうとするトニオが、仲間外れにされるのが、可愛くてかわいそうで、ウケます。この演出は、オペラってこんなに面白いのね!と感嘆する瞬間その①です。
本当に聴いているだけで、楽しくなる音楽で、思わず混ざりたくなる。
③ 2幕目のトニオのアリア、「僕はマリーのそばに Pour me rapprocher de Marie」。実はこちらの方が、「友よ」よりも難しいらしいです。
ハビエの声が変単じゃなく、音色で表現できることがよくわかる一曲。
④ 1幕目のマリーのアリア。別れを惜しみつつ、「私は行かなければならない」(Il faut partir !)も本当に美しい曲で、ソプラノの聴かせどころ。
⑤そして、2幕目のマリーのアリアの後に鼓笛が聞こえ、隊員達が会いに来たことを知ったマリーが歌う、Salut à la France ! ここは、しっかりと聴いて見てくださいね。オペラって、こんなに楽しいの!?と思う瞬間その②。
この曲は、フィナーレにも全員で歌われます。(私も歌いたくなった)
今回のキャスト
マリー:プリティ・ヤンディ 南アフリカ出身のリリックソプラノで、今人気沸騰中の若手シンガー。
彼女の声は、とてもきれいで、高音の技巧がすごい!
演技も上手で、まずまずだと思いました。
が、、、、私は、この演出の初演(2008年)で、マリーを演じたナタリー・デッシーがパーフェクト過ぎて、、、プリティは、大分高音の技巧に頼ってるなーと思っちゃうんでうよね。
正直ここでは、声に味がない? 周りにはすごく好評で、批評もよかったので、私だけかもしれませんが、、、、こう思うのは。
でも、シリアスオペラじゃないから、それでも良いのかも。ということに、しておきます(笑)
トニオ:ハビエ・カマレナ メキシコ出身のリリックテノール
あー、もうこのプロダクションは、ハビエを観る(聴く)ために、みんな来てたんですよー。
それにこたえて、もう演技も(体の動きも表情も)、歌も最高でした。
ただ、彼は声域の中間の個所がたまーにゴロっとする時があって(えへん虫がいる感じ?
)、あれ?と思う箇所がありました。
でも、高音ばっちり。その心配はゼロです。
私は、彼の低音も好きなんですよね。
とにかく、ハビエにこの役は、ピッタリです。
最近はもうちょっと重い役も歌い始めましたが、あまり無理しないで急ぎ過ぎずベルカントをメインで歌って欲しい~。
そして、名脇役のこの二人!ソロはないんだけど、本当に素晴らしいです。
シェルピス:マウリツィオ・ムラロ
ベルケンフィールド侯爵夫人:ステファニー・ブライス
ムラロはこの役は大得意。
そして、ステファニー・ブライス。彼女の声は、本当にクリアで深い、素晴らしい声で、大好きなシンガーの一人。
クラッケントルプ公爵:キャサリン・ターナ!
彼女の映画のファンだったので、楽しみにしてたけど、もうちょっとうまく、彼女を使えたんじゃないかなーと思いました。これは、監督が悪い(笑)
指揮:エンリケ・マゾーラ
彼は今年からシカゴリリックオペラの音楽監督に就任。マゾーラさんは、若手イタリア人指揮者で、ベルカントを得意としています。
母国イタリアでは、ドニゼッティフェスティバルの監督もしていたような。。。それだけに、ドニゼッティの思い入れは大きいのだと思います。
彼率いるシカゴのオペラも楽しみ~(来期のオープニングとくに💛)
ということで、いかがでしたか?
なんか、回を増すごとに、簡単なあらすじが簡単でなくなって、書くスピードがおいついてないのですが。。。。
さて、次回は、ポギーとベス。
これは、もしかして、荒筋は端折って、感想だけにするかも💦です。
Enjoy!