オペラファン、そして未来のオペラファンの方々、こんにちは。
オペラ研究家・オペラクラスAn Introduction to the opera 主催のYokoです。
昨日、ウィーンの『ドン・カルロス』を見ました!面白かった!!。
お薦めです、、、歌唱はいまいちでしたが(笑)
演出が良かった。
昨日は、生配信でしたが、終了後72時間観れるそうで、、、、
という事は、NY時間水曜日の夕方?まで観れると思います。日本だったら、木曜日の朝方??
しかもウィーン国立歌劇場の配信は、日本語字幕が選べる!これもポイント高いですね。一部間違ってたけど(笑)
https://play.wiener-staatsoper.at/
☝のリンクでご覧ください。
でもまず、アカウントを作って、登録してくださいね。でな来れば見れません:(
先ず、ドン・カルロの前に、、、一言
先月、メトロポリタンオペラが、今シーズン全面キャンセル=来年9月まで気ローズのニュースを発表しましたね。
もうショックでしばし寝込みました。
ブログ書く気にもならず、、、って元々、マメにかけませんが。
メット関しては、応援している傍ら、今回の決定は腹立たしいというか、色んな側面から見ても、他のアプローチがあったのでは??と疑問がいっぱいです。
そこで、色々な個人の思いと調べた結果をシェアしたいのですが、それは次回。
今回は、昨日無料配信で観た、ウィーン国立歌劇場の『ドン・カルロス』のお話
荒筋も、見どころもよく知ってるから、感想は?という方は最後に飛んで下さい
ドン・カルロス
このドン・カルロスは、フランス語版です。
もともと、このオペラは、ヴェルディがパリのオペラ座に依頼されて作曲した、5幕によるグランドオペラ(5幕、フランス語、バレエがはいる)。
後、ヴェルディ自身が、イタリア語版に改正して、幾つかのバージョンが出来ました。4幕のものが、メットではよく上演されます。
ウィキとか、オンラインで荒筋を探すと、5幕は、1幕目がフランスのフォンテンブローの森で、カルロとエリザベートの出会いのシーンがあり、後は、スペイン。4幕物は、全てスペインが舞台です。
が、それだと、ドラマ性に欠けるので、1幕目をハイブリッドでフォンテンブローのシーンをシーン1(出会いと悲しい政略結婚の知らせ=別れ)、スペインの礼拝所シーン2となっています。
この辺、荒筋を知らないと、ちょっとわかりにくいので、簡単に。
以下は、私の生徒さんへのメイルの抜粋です。
登場人物
歴史上の実際のキャラは太字。
- カルロ(カルロス) tenor フィリップ2世の息子
- スペイン王妃エリザベ―ト Soprano 仏王アンリ2世の娘、フィリップ2世の妻、元々はカルロのフィアンセ
- フィリップ2世 Bass スペイン王、カルロの父フランスの姫、
- ポーサ公 (ロドリーゴ)Bariton フィリップ2世のアドバイザーでありながらフランドル地方の独立を応援、カルロの友人
- 大審問官(宗教裁判長) Bass このキャラは名前はないですが、この時代世にも怖い地位のひと。
- エボリ公女 Mezzoカルロが好きで嫉妬いっぱい
見どころと荒筋
時代は1560年頃、宗教革命全盛期(というのか??)。
フィリップ2世はもちろんカトリック。その当時のフランダルはプロテスタントの勢いが増していて フィリップ2世はその弾圧に力を入れてたんですね。
でそこで重要なのは、宗教裁判長=大審問官。これが、王様よりも怖い 異端は(要するにカトリック以外)はすぐ死刑。
このオペラは、親子、夫婦、政治、宗教、友情と色々な面があり、見どころ満載なオペラです。
カルロスとヴァロア家の姫のエリザベートは、フランスVSスペインの関係緩和のためのいいなずけだったのだけど、事情が変わって、エリザベスはフィリップ2世の3番目の妻となります。前妻(1番目の妻)の息子のカルロスは、義母を愛してしまったんですよね。(2番目は、英国エリザベス1世のお姉さんで、ブラディーメアリと言われた、メアリ1世)ここまでは、史実。
この真実をもとに、フィクション化されているのが、オペラの荒筋です。
1幕目では、いいなづけ同士の二人が、初めて会い、お互いに恋に堕ちるという、このオペラで唯一ハッピーなシーンです。場所は、フォンテンブローの森。
ところが、使者が、エリザベートの父の仏王アンリ4世は、フランスとスペインの和解のために、エリザベートはカルロスでなく、彼の父のフィリップ4世に突がさえる平和条約を結んだと伝えます。
時は経ち、スペイン。
カルロスは、エリザベートを忘れきれなくて、全幕ウジウジしています
エリザベートも彼が好きで、年の離れた夫(フィリップ)からその心を隠しています。でも、勿論王妃としてカルロスを突き放すのですが。
でフィリップ王は、若い妻の心がつかめず悲しい、息子ともうまくいかない、し、次の王となるべく息子なのに、イマイチパッとしないどころか、ウジウジと自分の妻に横恋慕(または隠れて相思相愛)してて、しまいには、自分が弾圧してるプロテスタントをかばうという、父をそむく、王をそむく、でもはっきりしない息子にイライラ情けない、腹立たしい。
王でありながら、孤独な老人(とまでは、今考えれば年取ってないけど)。
そんな王の悲しい心のうちを歌うフィリップ2世のアリア Ella giammai m’amò彼女は私を愛していない、は、バスの超有名人気アリア。
コンサートでも必ず歌われます。
Verdi自身も、ミドルエイジに差し掛かった時に、自分とフィリップ王を重ねて、時と歳と時代をメランコリックに語ってたそうです。
ポーザ(ロドリーゴ)は、正直で、正義の味方。でもウジウジ王子のカルロスに、エリザベートの事は忘れて、可哀そうなフランドルの人々を考えろ!と勧誘(?)して、カルロスを自分の信念の味方にしちゃう、ってのもチャッカリしてる。(カルロスを説得する際の重唱も有名)
で、これだけでも結構入り組んでるのに、王妃エリザベートの美しい女官のエボリ公女が、またまた嫉妬深く、思い込みの激しい女性で、
余計話が混乱する行動に出るんです。
彼女の思い込みの激しさ=勘違いから、カルロスは、自分のことが好きで悩んでると勝手に勘違いして。で、カルロスは本当は王妃が好きだと知ると、また勝手に怒り狂い、王に告げ口しちゃうんですね。
おまけに、エボリは、フィリップのお妾さんでもあったんですよね。それで、告げ口と、そのお妾さんだったってのも王妃にばれて、解雇(修道院で尼さんになれ!)されちゃいます。でその時に歌うのが、とっても有名なアリア「ああ呪わしき、この美貌!」。この美貌ってのは、自分ね。私がこんなに美しいから、こんな目にあった!って嘆くの(笑)。
まあ、カルロスは、結局恋愛モノの恨みもあり、プロテスタントに死刑を言い渡すフィリップ父さん王に申し建てしようとして、聞いてもらえず剣を抜いてしまって逮捕されちゃいます。
そこで、とーっても怖い宗教裁判長(大審問官)は、王のお気に入りのポーザ公のほうが、プロテスタントの仲間で異端者だ!彼こそ死刑!!それが出来なきゃ、王も異端者!!とドヤされ、王はタジタジ(-_-;)。
結局、反お父さん陰謀を企てるカルロスをかばって罪をかぶったポーザは、刺殺者に殺され、カルロスにフランダルを助けろーと言い残して死んでいくんですが、その間際に、エリザベッタと話す機会をっ設けたと伝えます。
で、クビになったエボリが改心して、カルロスを逃しに行き、うまく脱獄。
サン・ジェスト修道院内で、エリザベートはカルロスを待ちながら、美しいアリア Tu che le vanitàを歌います。(これも素晴らしい)で、やっと二人きりで会えた二人は、 愛を秘密にしたまま「天国で再び会いましょう」と永遠の別れを告げます。が、そこに王と宗教裁判長が表れ、カルロは再びとらわれそうになるのだけれど、突然亡霊らしきもの(おじいちゃんの神聖ローマ皇帝カルロス1世‼)が表れ、カルロスをお墓へと連れていきます。(又は天国へ導く)で幕。
鑑賞のポイント
前にも書いた通り、このオペラは歴史上の実在の人物をモデルにしたいオペラ。
実際の王子カルロは、とんでもない人だったんですよね。
生まれた時から、手足の長さが違い、体は崩れていて、頭も弱く、精神的にも未熟だったそうです。おまけに野蛮で、動物の生き殺しとか、しょっちゅう。
そんな息子に、フィリップ王は全く愛情もなかったようで、それも手伝って、自分のいいなづけのエリザベートもとられ、、、
後に、父親に歯向かって、フランドルに逃げて、そこで王様になろうと企てたり、数々の奇行などが原因で幽閉され、23歳で亡くなっています。
まあ、その当時の強国のスペインの次期王がそんな状態だとは、やっぱり公開できなかったことから、色々な推測がありました。
ヴェルディのオペラは、そんな推測をもとに、カルロスとエリザベートの関係がロマンチック描かれたフィクションの戯曲「ドン・カルロス」シラー作をもとに、作られました。
先ず、そのバックグランドを理解しないと、今回の演出、特にヨーナスの演技が疑問に思えます。ヨーナスは、すごーく未熟なティーンを演じてるんですよね。(白髪いっぱいあるけど(-_-;) カツラかぶせろ!)
実際に、エリザベートはカルロと同い年で、彼女が18歳年上のフィリップ王と結婚したとき、彼女は14歳か15さい。
という事は、カルロもまだ子供。。。まあその時代、15歳って言ったら、もう立派な大人なんでしょうが、、、
1幕目のフォンテンブローの森のシーンでは、エリザベートも初々しく、二人とも恋するティーンって感じで、かわいい。(演技)
でも王妃になったエリザベートは、成長し、もともと未熟で頭も弱いカルロは、成長しきれず、理性よりも感情に流されてしまうんですよね。
このあたりが、本当にうまく描けてあってとても面白かったです。
そしてエボリの存在感を押してる演出も面白かったです。
本来フランス語版は、晩餐シーンはお決まりのダンス(バレエ)があるんだけど、そのシーンはカルロに焦がれる「エボリの夢」というシーンになって、楽しくカルロと暮らす姿が描かれています。
あと、特筆する箇所は、1幕目2場の礼拝所(修道院)のシーン。
エリザベートが父と結婚し、ウジウジ真っ最中のカルロに、話しかける修道士の老人。。。。
これが実は、彼のおじいちゃん、カルロス5世(神聖ローマ帝国カルロス1世)の亡霊👻なんですよねー。でもとってもお茶目で(笑)
下手すると、ドヨーンと非常に暗くなるオペラで、疲れてるウィークデーに観るオペラじゃないんだけど、この演出は、暗いお話の中でもシャレがあって、私はとても好きでした。
ただねー、シンガーが、、、、これは、また明日書きますね。