METの魔笛: オペラの新たな解釈

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極寒の影響で、2月は休業となったメトロポリタンオペラ(MET)。しかし、昨年から休業期間を利用し、オペラ以外の公演を行うようになりました。今年はハリー・コニックJr.、4月にはジョン・バティステが即完売。資金確保のための試みですが、オペラの未来が少し心配です。

METがオペラ専門の劇場でなくなったら、私、引っ越し考えなきゃ(笑)。

オペラの敷居は本当に高い?

よく「オペラは敷居が高い」と言わるけど、本当にかしら?

  • 値段:ブロードウェイやロックコンサートと比べると、むしろオペラは手頃。$300で最前列、$100以下の席もあり。
  • 外国語:K-popだって外国語!オペラには字幕もつきます。
  • 内容:オペラの敷居ってこれかも。。。。確かに歴史的背景がある作品も多い。それらのオペラは、背景を理解してると楽しみは倍増。だから、知識が必要だったり、博識な人の方が楽しめる感は、確かにあります。けれど、演目によっては、歴史的背景が必要でない作品も多々。殆どの古典オペラではステージ演出やシンガーの生の声のパワーに圧倒される楽しみ方は全作品共通。
  • 演出:最近の演出は、新しい観客を意識したものが増えています。モダンな解釈や、視覚的に楽しめる仕掛けが満載のプロダクションも多い。

演出を楽しめるオペラも最近はいっぱい。

これは、先に書いたような、新しい層の観客(若い、今までオペラを難しいと敬遠してた人たち)には、最適かも。

ただ、新作のモダンオペよりモーツァルトやVerdiのように言わゆるクラッシック作品の方が、音楽は心地よいし、絶対耳にのこる。

となると、お薦めは、3月末からメトロポリタンオペラで始まる、モーツァルトの『魔笛 Die Zauberhlote』。

モーツァルトの『魔笛』

私が映画 Amadeus(1984)をテレビで初めて見たとき、いくつか衝撃を受けたシーンがありました。

「オペラってなんだ!?すっごく面白そう!」

特に『ドン・ジョヴァンニ』の場面は衝撃的で、すぐにでも観に行きたくなったのを覚えています。当時ロンドンに住んでいたので、どこで上演されているか調べまくりました。

もう一つ印象に残ったのは、『魔笛』が出来上がっていく場面。

最初に、モーツァルトとよく飲んだくれてる、俳優であり劇場支配人でもあったシカネーダーが、みんなが楽しめるオペラを作れよ!と提案するシーンや、お義母さんが永遠に高音でモーツァルトの愚夫さをなじるシーンから夜の女王のアリア(あの有名な高音いっぱいの)になったり、実際の初演では、パパギーノ扮するシカネーダーが、ベルをならしたり、、、、映画の『魔笛』舞台では、モーツァルトの他オペラもパロディに使う演出もしたり、(それは現実にはないです(笑))。

実際に、魔笛はこのシカネーダーがモーツァルトに作曲を依頼し、彼が台本も書きました。宮廷向けのオペラとは異なり、一般市民向けの劇場用に書かれ、セリフと歌が交互に織り交ぜられた ジングシュピール(歌芝居) という形式になっています。

エンターテインメント性がたっぷり詰まった作品ですが、実は裏に深いメッセージも隠されているのが特徴です。モーツァルトとシカネーダーが属していたフリーメイソンの思想が色濃く反映され、啓蒙主義や人道主義、自己の完成を目指す理念が込められています。

1791年に作られた本作品、やっぱり男性のPointo of viewが中心です。実際にフリーメイソン組織自体、長い間男性のみの組織でした。

男尊女卑というか、「女は感情的で、男のリードなしでは、まとな決断はできない」、的なセリフがでてきます。

これ、いま普通にいったら、お騒ぎ(;’∀’)

こうしたセリフがあるオペラを現代にワープしてつじつまを合わせようと翻訳してしまうか否かは、演出家によって異なります。時代物であれば、その時代は、そういう考えだった、でもこれは今は違う、、、と観客に確認させる機会を与える=いじらない方が良い作品もあります。(でも無理していじりたくなる演出家が多い)

魔笛のように、王宮や貴族社会を描いた作品ではなく、”遠い異国の物語”で、時代設定もなしという作品であれば、演出家のクリエイティビティが存分に発揮される作品でもあります。現代の視点を取り入れながら、どのようにこの物語を語るのか――そんな演出の妙も、このオペラの楽しみ。

魔笛 @Met

メトロポリタンオペラで3月から始まる魔笛は、英国の俳優・演出家であるサイモン・マックバーニーによるもの。俳優で、演出家ってのが、シカネーダーみたいですよね。

これは、2023年に初演された演出のリバイバルです。その時も大好評でした。

彼が作り出す魔笛は、ブラックボックスシアター的な設定で、スクリーンに映し出される背景は、その場でプロジェクションアーティストが作り出し、セリフの最中の効果音も、効果音アーティストが舞台裾で(観客も見える舞台上裾)作り出します。

前半に書いたように、『魔笛』は、夜の世界をつかさどる夜の女王と、太陽を司るザラストロがリーダーの国があり、フリーメイソンの理念「啓蒙」のメッセージがあふれています。啓蒙は、「理性の光によって無知や愚かさといった闇を追放する」という意味で、無知・闇を=夜 (の女王)であり、やはり女性は男性のガイダンスが必要、と言いたいらしい。

ちょっとネタバレですが、この演出では、チームザラストロに対して、良さそうなプロパガンダで牛耳るコーポレート的な存在とされている感がします。結局最後は、善悪というより共存又はTo be continueという感じでクライマックスを迎えます。

笑いもあって、でも驚異的な絶頂コロラトゥーラアリアもあって、美しい重唱もあって、そして、工夫されてるアーティスティック・想像力満載の見せ方を楽しみつつ、でもこの解釈の意味はなんだろうEtcと、見る側の興味を沸かせ、またその後の会話がたのしくなる作品/プロダクションです。

あらすじとサイモン・マックバーニーにていては、こちら

プラス! この演出は、オペラではすっごく珍しい、”キャストが舞台に降りてくる”、そしていつもは深いオーケストラピットに位置するオーケストラも、ピットの床を上げて、オケも、キャストも、観客も一体となるステージになっています。

さすが、お芝居の国、イギリスの演出家。

一緒に魔笛を観に行こう!

私が主宰するIntroduction to the operaクラスでは、3月23日(日)にグループ観劇を募集中です。

お席は、前代未聞?のステージに近いお席をご用意。舞台から降りてくるパパギーノ(鳥刺し男)があなたの隣にやってくるかも?。

このお席は普段でも色んな意味で入手困難です。が当クラスの為にメットの担当の方が特別用意してくださいました。

詳細は以下です。

  • 演目:モーツァルト『魔笛』
  • 日程:3月23日(日)
  • チケット情報:お席はステージから5,6列目をご用意
  • 参加費:大人$245 子供$110
  • 参加費に含まれるもの:チケット代+予習講座(オペラ背景・演出ポイント・作曲家を解説)+感想会
  • 締め切り: ASAP.あと数席です。
  • 予習クラスのみ: 予習クラス+感想会 $147予習クラスのみ $135  
  • リピーター割引:既に個人メール差し上げました。

今回は、お子様料金も用意しました。この魔笛はファミリー用ではなく、原語ドイツ語で上演され、題材の解釈が少し大人です。でも、既にファミリー版を経験したお子様や、ティーンには、とてもウィットが効いた演出なので、楽しめると思います。そしてモーツァルト好きは勿論、お芝居が好きな方にもお薦めです。

オペラ初心者の方も大歓迎!

お申込み方法:こちらから、ご希望のクラス、お名前、メルアド、携帯番号、と共に、お申し込みください。

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