オペラを知って人生が100倍楽しくなるオペラ講座、An Introduction to The Opera主宰のステッソン陽子です。
NY時間6月2日(水)の夜は、メトロポリタンオペラ無料配信の『カルメン』を楽しみましょうねー。
『カルメン』は、最も有名なオペラ作品だと思うので、未だご覧になってない方は、是非。
メトロポリタンオペラの『カルメン』
ということで、お約束の解説と勝手な感想を書きますね。
今回配信される『カルメン』は、2019年の2月上演されたものです。
『カルメン』は、カルメンが題役ですが、主役はカルメンとドンホセ(ドンジョゼ)
配役は、今ドンホセを歌わせたら、横に出るものがいない!と言われるロベルト・アラーニャがホセ役。
主役のカルメンは、フランス人メゾのクレモンティーヌ・マルゲーヌ.。
私は、このキャストで、オペラ講座の生徒さんと1回、そして息子を連れてまた数日後に観ました。
まずは簡単な荒筋です。
でも、今すぐとりあえず見たいという方は、6月2日NY時間7時から、こちらのリンクへクリック!
(NY時間の翌日6月3日夕方6時半まで視聴可能)
『カルメン』簡単荒筋
舞台はスペインのセビリア。竜騎兵の官舎とたばこ工場は目と鼻の先。
タバコ工場で働く、男だったら誰でもぞっこんになる魔性&魅力たっぷりのジプシー女のカルメンは、唯一彼女に気を止めない竜騎兵伍長のドンホセにバラを投げつけて、気を引こうする。「魔性の女にかかわらないほうが良い。」と思いつつも、投げられたバラをこっそり拾ってポケットに隠し持つホセ。田舎からホセを訪ねてきた幼馴染のミカエラが、ホセに渡す彼の母からの手紙には、ミカエラと結婚するようにと。ホセは、カルメンのような悪い女に引っかからないように、お母さんが守ってくれてるんだと、ミカエラとの結婚を決める。
すると、カルメンが工場内で大げんかの末、相手の女に怪我をさせ、逮捕。連行するホセにカルメンは、「バラ拾って、持っているの知ってるわよ。逃がしてくれたら、ずっと愛してあげる。」と色仕掛け。のぼせたホセは、カルメンを逃がし、その罪で、逮捕。おまけに牢屋行き。(人生台無しその1)
数か月後、酒場でジプシーたちが宴をしているところに、人気闘牛士のエスカミーリョが立ち寄り、カルメンにアプローチ。まんざらでもないけど、恋人がいるからと断るカルメン。カルメンは熱しやすく冷めやすいけど、二股はかけないまっとうな女(笑)
釈放されて、数か月ぶりに再開するホセとカルメンだが、点呼のラッパを聞き、宿舎へ帰り支度をするホセに、カルメンは大キレ。そこへ、ホセの上司の衛兵隊長がやってきて、カルメンに迫ろうとするので、嫉妬に狂ってキレたホセは、彼と決闘。結局隊長は、ジプシー/盗賊団に捕まるが、刀を上司に抜いてしまったホセは、軍に帰れず、カルメンに誘われるままに、ジプシー(盗賊団)に入団。カルメンと盗賊団と生きる覚悟を(泣き泣き)する。
せっかく一緒に盗賊生活が始めたのに、カルメンのホセへの想いは既にクールダウン。(仕事無くして盗賊になっちゃって、思いっきり暗くてビターな彼なんて、そりゃカルメンにとって、楽しくない。)カルメンはもう自分に飽きていると気づきているホセ。二人の仲は最悪状態のところに、エスカミーリョが、「そろそろ恋人に飽きたでしょ。」とカルメンを(わざわざ山中に)訪ねてきます。怒り狂ったホセは、エスカミーリョと対決するけど、カルメンに止められちゃう。
「今は帰るけど、みんなを僕の闘牛に招待するよ!」と華々しくもおめでたいエスカミーリョが去ったあと(闘牛士の歌を歌いながら)、ミカエラが、母親の危篤を知らせにホセを追ってきます。
今、カルメンを一人にしたら、絶対ほかの男(エスカミーリョ)になびく!と確信のホセは、恨みつらみを吐きながらも、ミカエラと共に山を下ります。
セビリアの闘牛場の前。闘牛の日。着飾ったカルメンとエスカミーリョが登場。
人ごみの中に、すっかりみすぼらしい姿になった、ホセを見つけた、カルメンの友人は、カルメンに忠告。
エスカミーリョは試合の為に闘牛所に入り、カルメンは「私は逃げも隠れもしないの。」とホセに会う決心。
母も亡くし、全てを失ったホセは、一緒にやり直そうとカルメンに懇願するけれど、カルメンは「もう愛してない。」ときっぱり。泣いたり騒いだり、すがったり、最後はナイフで脅すホセにも動じず、「あんたがくれた指輪、返すわよ。ほら!」と指輪をなげる。途端に、ホセはカルメンを切りつけ、カルメンは息絶える。ホセは、「私が殺した、、、愛するカルメン。。。」とカルメンの亡骸を抱いて泣き崩れる。The End
簡単に書こうと思うったけど、それぞれの幕を書いてしましました。
一言でいえば、「間違った相手を選んだ末の悲劇」です。
聴き所:
あまりにもありすぎて、、、全部かも(笑)
先ず、前奏曲。きっと、オペラの序曲。前奏曲の中で一番有名ですね。
闘牛のテーマから始まり、次は、悲劇を予告する運命のテーマ、そしてそこから一転して一幕目に移ります。
1幕目に兵隊の交代時に子供たちが歌うマーチ、カルメンが登場する「ハバネラ」、カルメンがホセを誘惑するときにうたう「セギディーリャ」
2幕目は、ジプシーが集まるバーで踊りながら歌う「ジプシーの歌」。このメトロポリタンオペラの演出のこの場面は、ダンサーと一緒に、歌手たちもみんな踊ります。すごい、これが。
昔は、仁王立ちして、歌うだけでよかった(というか普通だった)けれど、今は、本当にシンガーはいろんなことを要求されます。演技は勿論、踊ったり、走ったり、壁をよじ登ったり、、、、歌いながら、、、。
演出によってはtoo muchなものも、ありますが、この場面は本当に素晴らしいです。
そして、待ってましたの「闘牛士の歌」
そして、テノールの勝負どころの「花の歌」
私は、2幕目最後にカルメンとホセ、そして、ジプシー&盗賊全員で歌われるフィナーレも好きです。
3幕目は、ミカエラのアリア「Je dis que rien ne m’épouvante」
4幕目の間奏曲、「アラゴネーズ」
と勿論、最後のカルメンとホセのシーンですね。
今出した聴き所は一般的なものですが、、、今回の演出・キャストで、特に聴き所なのは、1幕目のホセとミカエラの手紙のシーン。
ミカエラがホセの母親のからのお金と手紙を渡して、「そしてママからのキスも。。。」と言って、ミカエラがホセにキスします。その後、手紙を胸に抱きして、二人で「母の便りに思い出辿れば、懐かしふるさと瞼に浮かぶ」と歌います。
実は、ミカエラ役のアレクサンドラ・クルジャックは、ホセ役のアラーニャの奥さんなんですよね。
だから、どちらかというと、カルメンとのやりとりよりも濃厚で、ラブラブ(笑)。本当は、どちらかというと、ミカエラはホセに💛だけど、ホセにとってミカエラは妹みたいな感じなんですよね。
と、ここで、マメ知識へ―。
マメ知識
カルメンの原作は、プロスペル・メリメの小説。
- 原作では、カルメンは、情熱的な恋多き女ってだけじゃなくて、盗みもしたり、とんでもない女のよう。
- ミカエラは原作には無く、オペラの中で、カルメンの自由奔放な姿をより浮き上がらせるために、ミカエラという純粋な娘を創ったそうです。なので、彼女の役割は、「良い子」。
- 実際、ミカエラは孤児で、ホセの母に引き取られ、一緒に住む17歳の清純な娘、なのです。
- ホセはバスク出身で、過去に、喧嘩をして、村には戻れない身=直情型。 過去があって、戻れないけど、竜騎兵になって、やっとお母さんを安心させている。。。。のに、カルメンに会って、奈落の底へ、、、、
今回の演出&キャスト
今回も、私の独断と偏見の超個人的な意見です。ご了承くださいませ。
今回配信される演出は、モダンっぽいけど、結構スタンダートです。
舞台上に作られた壁が回って、色んな情景を作ります。
シンガーに求める(コーラスにも)動きが細かい!
配信は、カメラを通してみるので、舞台全体を自分のペースで観ることができないのがマイナス点ですが、クローズアップで観れる利点がありますよね。
歌手の表情もそうですが、コーラスや、アクター達の演技もお見逃しなく!(例:2幕目酒場シーン、エスカミーリョの横に立つ女性。エスカミーリョがカルメンに言い寄る際に、怒ってます)
私は、ホセを歌うアラーニャが、情けなくてよかったです(笑)
彼は、こういう熱い役をやると本当に素晴らしい。
プラス、フランス語の作品を、本当に言葉を大切にして歌えるのは、現在アラーニャをおいていない、と言われています。
主役のクレモンティーヌ・マルゲーヌさん。よかったです。でも最高!って感じではないですが。。。。
この演出がデビューした時のカルメンは、人気のエレナ・ガランチャでした。そして、ホセはアラーニャ。
ガランチャが、カルメンらしい、Earthy(土臭い)な感じがするか?というと違うような気もしますが。彼女のカルメンは、クールなカルメンなんですよね。だから、ピンとこなかったけど。
でも、ラストシーンで、ガランチャの冷たい感じが、アラーニャの熱さと対比されていて、素晴らしかったんです。
それに比べると、ちょっとマルゲーヌさんは、物足りなかったかな、、、と。
闘牛士役は、アレクサンダー・ヴィノグラドフ。素敵な声と姿で、皆さんを魅力してました。が、私は、ちょっとものたりなかったかな~と。一瞬すごく良いけど、あんまり味がないというか。。。。
でもこれはあくまでも好みです。
アラーニャの奥様のクルジャックさんは、とてもたくさん拍手とブラバーをもらってました。
良かったけど、そんなに良かった?って気もしますが(笑)
アラーニャとのケミストリーは最高でした(当然!?)
オマケ。。。。オペラの後の会話
カルメン鑑賞後の楽しみは、みんなに感想を聞くことです。
良かった、よくなかった、云々でなく、「誰のが1番可哀想?」という、非常にいい加減な質問(笑)
というのは、終幕後、メットのドアを出るときに、生徒さんのおひとりが、「もう、ホセのお母さんを思うと、泣けてきました。」って。
おおーそういう、見方もあるのね、と新鮮でした。
彼女は、可愛い息子さんがいて、私息子と一つ違い。
実は、私も、今回、ホセ、、、こんな女に引っかかったから、、、、と彼の悪運を、薄着たいなシャツを着た、アラーニャを観て思ったんっですよね。
でも、独身の頃は、ホセみたいにマザコンの男なんて、やだー😩、でチームカルメンだったのに(笑)。
息子が可愛い今は、チームホセ。
あ、でも、娘には、ホセみたいな人は、避けるように言ってます。
さて、あなたはチーム・カルメン?
それとも、チーム・ホセ? 😆
Enjoy!