早くも年末です。
全く、いつもマメにブログ書いて無いなーという反省で始まりますね、私。
クラスの準備と、観劇に忙しくて(言い訳)
さて、今日は、今シーズンのメトロポリタンオペラの年末年始お薦め演目について書きますね。
摩訶不思議オペラ?『影のない女 Die Frau Ohne Scatten』
一つ目は、リヒャルト・シュトラウスの『影のない女』。
これは既に、2回観てきました。
一番感動したのは、セットです。
最近のメットは、ターンテーブルを回してシーンを変えるデザインが多くて、演目によっては、回るスピードが速くて、もう笑っちゃう場合も多々あります。
観てるだけで乗り物酔いしたって方もいました(笑)
でも、故Herbert Wenicke演出のこの作品、ステージが本当に上手い具合に上下して、1幕1場の鏡に四方おおわれている天空の世界、2場の染師バラクのおんぼろ家がある人間の世界が、ステージ上にある階段で上手くつながっていて、シーンによって舞台が上下し、天空の世界にいる皇后と乳母はその人間が見えない階段から現れるんです。
幕が上がる前に薄い垂れ幕がステージ前にあり、オーケストラピットの明かり(桶メンバーの譜面台のライト)のリフレクションが、観客には、目の錯覚で、幕の向こう側のステージに灯篭が流されているように見えて本当に美しい。幕が上がる前から既に幻想的な世界。
音楽は、シュトラウスのすべての良いとこどり??というほど、素晴らしい。一部、ワーグナーのリンクを思い出させるような音楽の組み立てもあって、色んな楽しみ方ができます。
残念ながら、この作品は、メットのHDでは上演されないので、実際にメトロポリタンオペラに足を運ぶしかありません。
あと、14日、19日と二日だけですが、HD配信されない件に関し、ファンから相当な苦情がメットに行っているようなので、On Demandのリストに加わるような気もします。
アメリカ在住でSirus XMをサブスクされている方は、12月15日に私が観た7日のマチネの録音が3pmESTにオンエアされます(シンフォニーホールのチャンネル78)。
「影のない女」の簡単あらすじは、皇帝(人間)と結婚した妖人の皇后が、結婚後1年弱でも影がない(=子供ができない)ことから、皇帝が石になってしまうことを知り、人間の影(影は人間性や母性の象徴)を得るために乳母と共に人間界に降りていきます。彼女は影を得る過程で、成長し、愛と共感の重要性を学びます。一方で、染物師バラクとその妻の物語は、夫婦の葛藤と和解を描き、皇后の成長と対比的に描かれます。最終的に全員が救済され、愛と調和が勝利する壮大なフィナーレでめでたし、めでたし。
この作品は、日本でも今秋ずいぶん変わった演出で上演されたようですね。
ドイツの演出家のコンヴィチュー氏の解釈は、オリジナルの台本は女性軽視・差別だと。。。。
いや、私はそう思わなかったけど(笑)
影=妊娠する機能=子宮って超ダイレクトに解釈しちゃう彼のほうが差別では???
(二期会の『影のない女』に興味ある方はこちら。殆どの方はボロ●●にけなしてましたが(笑))
影がなくては妊娠は出来ない→妖精らは体の機能云々でリプロダクションをしないんでしょうねー。
影がないから子供が生まれない、というより皇后に影ができない=彼女は人間でなく、皇帝と結婚していても、心は妖人のままで、本当の愛を感じていないーそれは、美しいだけでなく、色んな要素があり、たまに犠牲も生じる。
冥界の世界からやってきた皇后と乳母。乳母は人間が嫌いで、彼らの汗をかいたり、涙をながしたり、という姿がうっとうしくて、悪臭もあると吐くように言います。印象的な言葉が(解釈ですが)、「人間の影は、太陽によってもたらせられる。一日は太陽によって支配され、それに振り回されて生きていく人間のおろかさよ。」と言います。影はその ”愚かな”人間のシンボル。でも、その影を皇后は欲しがるし、よく出てくる悪魔の話でも、悪魔は影を欲しがりますよね(ファウストやホフマン物語の原作)。
私は、演出家の解釈は、そのクリエイティブなアイディアに興味を持つときも多々ですが、本来のメッセージを崩すのは、演出家の自己満足じゃないかなーと思っちゃいます。
『トスカ Tosca』ー 初心者も楽しめて、オペラファンにも知れば知るほど深いスーパーオペラ。
トスカは自分が何度も観てるから、オペラ観劇クラスでも何度も行ったような気がしてたんだけど、実は1月の観劇がクラスとしては2回目。
トスカは本当に上演回数が多くて、このオペラを知ってたら、きっとどこかで観れるという、知ってて損のないオペラです(笑)
上演回数の多さの理由は、まず登場人物の少なさ。
主要キャストが3人、トスカ、カヴァラドッシ、スカルピアの3人だから、キャスティングがしやすい。
先に出た影のない女とは全く両極端です😅
そして3人でストーリーが結構単純だから、初心者にも楽しい=チケットが売れる。
とにかく、どのソプラノ(トスカ)、テノール(カヴァラドッシ)、バリトン(スカルピア)、それぞれの役を歌いたがるシンガーの多いこと!
トスカはすっごく難解な役でないけど、DIVA度がめちゃ高いので、トスカを夢の役というソプラノがごっそりいる。(次は蝶々さん)
カヴァラドッシ役も、俗にいうShow Stopperの素晴らしい有名アリアが1,3幕とあり、2幕目は勝利だー!(Vittoria!)意味もなく声を響かせられて、拍手喝采がもらえて嬉しくなるシーンがあります。
そして、極悪警視監のスカルピア。。。いやああ、オペラ界の悪者って言えば、スカルピアか、イアーゴ(Otello)だから、低音シンガーはみんな歌いたがる。インパクトいっぱいなのに、2幕目で殺されて3幕目はお休みだから楽だし(笑)。
お話は結構単純
恋人である画家で革命派のカヴァラドッシが投獄されてしまった歌姫トスカは、彼を救うために極悪警視監のスカルピアに一晩過ごす条件を飲むが、スカルピアに迫られた瞬間彼を殺害してしまう。生前のスカルピアの命令で偽死刑が行われるはずだったが、実は偽死刑は全て嘘で、カヴァラドッシは、弾丸に倒れる。その後スカルピア殺害が発覚し、トスカも「スカルピア!神の前で審判されましょう!」と、聖アンジェロ城から飛び降りる。
オペラ史上最高のトスカ歌いと言えば、マリア・カラス。
そして現在の最高のトスカ歌いは、、、、1月にメットで歌う私の大好きな、ソンドラ・ラドヴァノフスキー。
ソンドラSondra については、何度もブログに書いているんですが、本当に毎回驚かされる大好きなソプラノです。
ゴシップだけど、去年?一昨年?カナダ人のご主人と離婚しちゃって、生活の場をヨーロッパにうつしてしまっているような気がします。元々イリノイ州出身のカリフォルニア育ちだったような記憶があるのだけど、ご両親も亡くなり、家族が米国にいないのか、ヨーロッパはメジャーなハウスへの移動が楽だから、やっぱりあちらが活動の主体になっちゃっているのかも。
ということで、以前は、NYで必ず年に何演目か歌っていた彼女も、最近は年に1演目しか歌わなくなってしまい、その同じ時期に、どどーっと北米のハウスを回るような気がします。
(今シーズンは、1月にNYでトスカ 、そして1月2月とDCとシカゴあとは全部ヨーロッパ。)
本当に良い(と私が思う)シンガーがメット離れをしてるのは、本当につらいーファンとして。
まあ、これはまた別に機会に語るとして、、、、
メトロポリタンオペラのトスカの演出は、とてもトラディショナルな演出で、見た目も美しいし人気の演目です。他のハウスに比べオーソドックス過ぎる?という声もあるけれど、それには理由が。
例えば、マドリッドのTeatro Realの演出は、ミューズ?か死の天使??みたいなのが、ずっとヌードでうろうろしてたし、ベルギーかどこかのは、スカルピアが思いっ切りセクシャル狂いなサディストで、陰毛しっかり見せてるヌード写体がステージ中にあったりとか。。。。。気が散り過ぎる、観客には(-_-;)
実は、メットも少しそれに近い演出があったんですよねー、現演出の前に。
スカルピアの邸宅に、売春婦のお姉さんたちがはびこってて、スカルピアと淫乱パーティーしてるシーンから2幕目ははじまるという。。。それが確か、2009年くらいのLuc Bondy演出のプロダクション。。。大大大不評で、(しかも人気だったエレガントなネオクラシック時代を再現したフランコ・ゼッフェリの演出をリタイアさせて作った新しい演出だったから)、支配人のゲルブ氏は相当叩かれたんですよね。で、急遽またクラシックな仕立てで出来上がったのが、現在のメトロポリタンオペラのトスカの演出。
ということで、メトリポリタンオペラのトスカは初心者にもピッタリです。
が、音楽の深さはオペラファンにも面白い。
プッチーニの音楽は、オーケストレーションが、物語の情景を語ってくれてるんです。
だから1幕最初に、脱獄したアンジェロッティ(カヴァラドッシの革命仲間)が教会に逃げ込んでくるときから、彼の状況が音楽であらわされ、彼が探す隠してある鍵も、音楽で既にどこにあるか表現されてるんですよね。
聴く側は知らなくてもよいことだけど、知ってると楽しい(笑)
トスカは、グループ観劇の演目になっていて、1月12日にグループで観劇します。(キャンセルがでたので、数席募集中です)
その前に予習クラスを行います。
こんな感じで、初心者の方にはあらすじ中心に分かりやすく、そしてオペラファンには、知れば知るほど楽しい、ライトモチーフのお話もするので、楽しみにしてください。
詳細、お申込みは こちら
その他のオペラ
12月は恒例のファミリー向け英語版の『魔笛』があります。
ライオンキング演出家として有名な、ジュリー・タイマーが監督\デザイン。ビジュアル的には満足かな。
でもあまりにも毎年過ぎて、飽きてきたかも…
それに正直、最近は若手シンガー起用してのキャスティングなので、エキサイティングではないかも。
ただ夜の女王は、現在この役を歌わせるとピカイチのキャサリン・レイク
ただ、彼女は3月の原語(ドイツ語)全曲版にも、夜の女王で出演するので、大人は春まで待っても良いかなーと言う気もします。
我々のクラスでも行くので是非^_^
あとは新演出のAida…
いやーでも今までのスペクタルなThe Opera的なAidaを期待するとどうかな???と思いますが…
これは後々アップデートしますね^_^
ENJOY OPERA!