ガーシュインの『ポギーとベス』解説!メットオペラ無料配信

連続投稿3日目、、、過去にない快挙というか挑戦ですが(笑)

今日のメットオペラ配信は、今までオペラに興味がなかった方も、少しジャンルが違うので、お勧めです!

ガーシュインの『ポギーとベス』は、ブロードウェイのミュージカルや、いくつかの曲が、ジャズのスタンダートとなって、有名です。(サマータイム、I love you , Porgy)

でも元々は、オペラなんですよー。

いつものように、視聴はメトロポリタンオペラのHPから (メインスライド左下のNightly stream)
開始時間は6/4、NY時間19時半から。そこから23時間鑑賞できます。

では、今回は、マメ知識からでーす。

『ポギーとベス』マメ知識

  • 『ポギーとベス』はフォークオペラとガーシュイン自ら命名。フォークというのは、古く伝わる風習・伝承的な音楽で、舞台になる南部の(サウスカロライナ州チャールストン)雰囲気をだしている。
  • ガーシュイン団体が、権利を厳しく管理しているので、上演数が少ないし、上演の条件も厳しい。
  • その上演条件の中で、絶対なので、歌う役は、どんなに小さな役でも黒人シンガーとされている。よってコーラスも全員黒人。
  • その点からも、国によっては、それだけ黒人シンガーを集めるのが難しく、上演回数が少ない。
  • 有名曲「サマータイム」は子守歌で、オペラが始まってすぐに、若いママ、クララが赤ん坊に歌う。
  • ベスが歌う「I love you , Porgy」は、セリーヌ・ディオンや、クリスティーナ・アギュレラにも歌われている。

簡単荒筋

止めようと思ったけど、頑張って、短くした荒筋です。そのあと、聴き所見所、勝手な感想と続きます。感想は、あくまでも私の感想なので、皆さんはまた違った感想があると思います。

チャールストンのスラム街のキャットフィッシュロウ(集団住宅)の中庭

仕事が終わって、男たちがギャンブルして、女たちはおしゃべりに忙しい。足が不自由で乞食のポギーも加わり盛り上がってるところに、乱暴者のクラウンが内縁妻で情婦のベスとやってきて、ジョイン。ドラッグディーラーのスポーティングライフだけが、彼らの到着を喜び、クラウンはお酒とドラッグでハイになる。密かにベスを愛するポギーは、みんなに冷やかされる。ゲームが白熱し、クラウンは、住人のロビンを刺し殺す。

警察のサイレンをきき、みんな一目散に逃げ、クラウンも一人で逃亡。逃げるタイミングを失ったベスを匿ってあげたのは、ポギーだけだった。

時がたち、ポギーと一緒になったベスは、キャットフィッシュローの人々にも認められ、人生で初めて幸せで安心な気持ちで過ごす日々に感謝して、ドラッグで誘うスポーティングライフの誘惑にもポギーの助けで乗り切る。けれど、仲間といった隣島でのピクニックで、逃亡中のクラウンが待ち構えており、帰りの船に乗り遅れる。そこで、結局クラウンに体を許してしまう。

数日後にキャットフィッシュローに戻ったベスは、高熱で寝込み、ポギーはクラウンとの再会を察するが、ベスへの愛を歌い、許す。その言葉に、ベスもポギーへの愛に目覚める。

嵐の日、キャットフィッシュローの人々が、荒波の中船を出してジェイクと漁夫たちの帰還を祈っているところに、クラウンがベスを迎えに乗り込んでくる。クララの夫、ジェイクの乗った船が沈み、それを知ったクララも追って外に飛び出し、海に飛び込む。クラウンも人々を意気地なし!罵倒して、クララを助けに飛び出す、が、クララもクラウンも嵐と大波に飲まれて死んでしまう。

翌日、キャットフィッシュローは、クララとジェイク、そしてクラウンの追悼をし、ベスはクララの赤ん坊の世話をポギーと共にすると決意する。 ところが、実は未だ生きていたクラウンが、ベスを取り戻しにキャットフィッシュロウに忍び込むが、ポギーは背後から近づき、クラウンを殺す。

警察がクラウン殺しに到着。ポギーを事情聴取に警察に連行する。1週間たっても帰らないポギーと自分の身の上を心配するベスに、ここぞとばかりに迫るスポーティングライフ。ドラッグを見せて、「これで気分がらくになるよ」とドラッグをちらつかせ、ついにベスは誘惑に落ちる、ハイになったベスに、スポーティングライフは、「俺にNYに行こうぜ!いっぱいチャンスがあるよ。」と甘い言葉で口説き、と共にNYに旅立つ。(このNY行きが悲惨な結末になるのは、手に取るようにわかるのに。。。)

入れ違いで、釈放されたポギーが、留置場内の賭博で儲けたお金で、ベスにプレゼントを買って帰ってくるが、ベスはいない。

隣人たちも、言い出せない。遂にマリア(キャットフィッシュロウの女将的存在)に真実を聞いたポギーは、ゴートカートに乗って(本演出では、片足を乗せるカート)、ベスを追って北上(NYの方向)に向かって出発する。 

おしまい。

 山羊のいないゴートカートで、ポギーがNYにたどり着くのを願うばかり(-_-;)

こうやって書いてみると、原作が小説で、そのあと、ブロードウェイでお芝居になったものをオペラ化したので、起承転結がはっきりしてて、荒筋が書きやすい☺

見所/聴き所

これもたくさんあるんですよねー。

最初のイントロの音楽も興奮するし(笑)

一般的な聴き所は、有名なのは

①サマータイム (クララ) 赤ん坊をあやして歌います。有名なジャズとの違いを聴くのも楽しい。

クララ役のゴルダ・シュルツ

② My man’s gone now ( すっごいソウルフルな歌で、聴かせどころ。これをオペラで歌ってソウルフルなのもまたすごい)

③ I got prenty of nottin

④ Beth , you is my woman now(これは、重唱)

⑤ It isn’t necessary so (これは、聖書を面白がって、否定してる歌詞で、ドラッグディーラーのスポーティングライフがみんなをハイさせて歌ってます。)

⑥ I love you Porgy

らが有名なアリア(というか、ナンバーといった方がよいのかな?)

でも個人的に見所で、このオペラで好きなところは、1幕目の喧嘩のシーンのオーケストレーションがモダンで、破壊的な感じが面白いと思います。

歌を聴くと、とても聞きやすい、メロディアスだけど、歌が入らない、状況を表すオーケストレーションは20世紀の音楽ってのがわかります。

あと、やっぱり好きなのは、コーラス。

とにかくパワフル。

キティワ島にピクニックに出かけるときに、みんながウキウキしてる場を表すコーラス「Oh , I can’t sit down」も楽しいし、キティワ等について、スポーティングライフのドラッグでみんなでハイになって踊って歌う「I anin’t got no shame」も、一度聴いたら忘れられないメロディとリズム。

そして、最後のフィナーレのコーラス。「Oh Lawd, I’m on my way」も、感動します。原作では、山羊が引くカートに乗ってNYを目指すんだけど(ポギーは足が悪いので、このカートを足代わりにしている)、これじゃあ絶対NYにたどり着かないだろうなあ、、、と思いながらも、この音楽でグッときちゃいます。

個人的に好きなソロ曲は(なんか、アリアと言い難い)、最後にスポーティングライフが、一人になった不安なベスを誘惑して、NYに誘う歌「There’s ab boat dat’s leavin’ soon for New York」がまたいい曲。 スポーティングライフは本当に蛇みたいなやつで、一番ろくでもない最低人間だけど、一番魅力的なソロをもらってるかも。

まあ、人生そんなもの? (-_-;)

プッチーニやワーグナーを既に見て学んだ方、、、このオペラにも、ライトモティーフまではいかずとも、それぞれのテーマメロディが出てきます。
主役の二人は勿論、スポーティングライフがちらつかせる麻薬、”ハッピーダスト”のモティーフ、探してみてください。

キャストと感想

すっごく楽しみにして、行ったこのオペラ。

2019年の9月に観たんですよね。このオペラを生で観るのは、初めてでした。

イントロが始まって、ワクワク感がより高まり、舞台があくと、NYから一気にチャールストンのキャットフィッシュローにワープ!

サマータイムの導入部分から、南部の湿った暑いけだるい夕方を感じました。

クララ役のゴルダ・シュルツは、南アフリカ出身のリリックソプラノで、天使のような美しい澄んだ声に、深みもあり、大好きで、期待してたんですが、、、、んんん??なんか違う。

彼女のモーツァルトも、Verdiのファルスタッフもよかった。でも、ガーシュインって、また独特なんですよね。

思うに、ゴルダの声って、確かに彼女は黒人なのかもだけれど、アメリカの”アフリカンアメリカン”の黒人とちょっと違うような。

このオペラには、彼女は正当過ぎるのかも。。。

マメ知識で、書いたように、『ポギーとベス』は、ガーシュインから、出演者(シンガー)は全員黒人という条件があります。でも、黒人でも、なんだろう、、、南アフリカからヨーロッパで訓練されたシンガーは、ガーシュインの思う、”南部”の香りを表現できないのかな、と思いました。だって、南部を知らないし。

ちょっと残念。

ポギー:エリック・オーウェン と、ベス:エンジェル・ブルー

ポギーは、アメリカ人バスのエリック・オーウェン。 彼は、ワーグナーバスとしても有名です。

ポギーの役は、何度か歌ったことはあるようですが、実は彼の声には、この役はちょっと高いそうです。

確かに、ワーグナーを歌っているときのような、しっかり声が息の上に座っているような感じはしなくて、ところどこと、勿体ない感はあります。でも、やぱり場数を踏んでる人は違う、、、し、このオペラだから(トラディショナルなオペラでないから)そんなに違和感も感じないのかもしれません。

ベス役は、この役は初めてのエンジェル・ブルー。カリフォルニア出身のソプラノで、ミスカリフォルニアだった時代もあるそうで、ほんとうに美しくチャーミングなシンガーです。彼女が、情婦のベス?ってほど、イメージが遠くてびっくりだったのですが、心の弱さをよく表していて、素晴らしかったです。

特に、最後の麻薬の誘惑に負けて、恍惚としつつも、半泣き状態で、スポーティングライフについていくときの表情。

自分が情けなくてしょうがないけど、もうコントロールができない、、、、

胸が痛くなります。

エンジェルは、牧師さんを父親にもち、常にゴスペルに囲まれて育ったそうです。

だから、音楽的にも、このオペラの真髄も表現できるんでしょうね(ベスは信仰深い役ではないけれど)。

スポーティングライフ役は、メットデビューで大抜擢された若手のテノールのフレドリック・バレンティン。

スネーク過ぎるスポーティングライフ役のフレドリック・バレンティン

彼は、ムキムキで、目つきも鋭くて、確かにスネークって感じ(-_-;)

映画のポギーとベスで、サミーデイビスJrがこの役を演じたのは有名ですね。その印象が強い人は、ちょっと引くかも(笑)。

私には、なんか怖すぎました。スポーティングライフって、へらへらして、毒牙を隠してるろくでもない悪党ってイメージがあるんだけど、バレンティンさんは、ヘラヘラしつつ毒牙も丸出しって感じ。

肝心の歌の方は、It isn’t necessary soは、良いけど、There’s ab boat dat’s leavin’ soon for New Yorkが、なんかイマイチ。「なんでも夢のかなうNYなんだよ~。」と誘う、抜けるようなトーンが欲しかった。声の強さに任せて歌うのは、ありがちなんだけど、だから息が回らないような気もして、私は好みではありませんでした。

が、観客にはすごい人気でした(笑)

キャットフィッシュロウの女将的存在な、マリアにベテランのデニス・グレイブス

マリア役のグレイブス

アメリカ人メゾソプラノの彼女は、90年代にカルメンで一斉風靡した人なんですよね。私も、彼女のカルメンや、デリラは何度か見ました。

でもねー、どうなんだ??声がこんなに衰えても、オッケーな役だっけ、これ??と思うほど、ガラガラなんですよね。

若いキャストからしたら、大先輩のグレイブス様と歌える!って感じだけど、聴く方からしたら、ちょっと😅というのが私の感想。

マリアのアップテンポで、ラップのノリの歌で、スポーティングライフを追い出すシーンがあるんだけど、それもイマイチだったし。

あ、でも彼女も観客には大喝采でした(笑)

クラウン役のアルフレッド・ウォーカーは、普段は主役のポギーとレパートリーにしてるらしいのですが、今回は悪者クラウン。でも、イマイチ怖くない(笑)ポギーのほうがあってるかもです。

★夫を殺される信仰深いセレーナ役は、活躍中のアメリカ人ソプラノ、ラトニア・ムーア―。

彼女は上手いです。

ジャズとオペラを学んだそうで、幅が広い! 彼女も素晴らしかった!

セレーナ役の大成功で、メットと出演の機会がまた増えたようです。

★このオペラは、脇役が沢山いて、主役、準主役級の役のほかにも、小さな役なんだけど、ちょっとしたソロがある役が沢山います。

話題になったのは、イチゴ売りの女性(笑)

探してみてください。

こんな風に書くと、イマイチのキャストなのかな、と思いますが、コーラスも素晴らしく、全体のチームワークが最高なのが、感じ取れました。

そういえば、メットのロビーに別の用事があっていた時に、ポギーとベスの出演者たちが、歌いながら歩いてました。すごい迫力で、素晴らしかった(笑)

オペラ仲間になりましょう!

さて、今日で3日連続、+ 初日のトゥーランドット=4作品のオペラを紹介し、感想をみなさんにシェアしてきました。

毎日書き込むのは、思ったより大変でしたがmこれがきっかけで、皆さんが、オペラを知って、楽しんでくだされば、本当にハッピーです。

オペラ仲間を増やして、一緒にこの素晴らしい芸術をもっと多くの人々に伝えたいと思っています。

そして次の世代につなげて、オペラがこれからも先、人々の人生を豊かにしてくれることを願っています。

是非是非、皆さんの感想も教えてくださいね。

さて、明日は最終(私の解説の)

大好きな、Verdiのマクベス!です。

Happy Listing &watching Opera!

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*all pictures are taken via Metropolitan Opera’s Met on demand screen by the author . Not for commercial use, only for education purpose .

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