ヨーロッパ旅行:オペラハウス2023年夏

こんにちは!

今回は、お約束の6月末から7月中旬まで、ヨーロッパで観たオペラ作品、ハウスの感想を書きますね。

この夏にヨーロッパに行った目的は、、、

大好きなソプラノSondra Radvanovsky ソンドラ・ラドヴァノフスキー『Turandot』の役デビューが、チューリッヒ歌劇場で6月から予定されたいたからです。

しかも、ソンドラは、秋からの新シーズンにメットでは歌う予定なし。。。。

これは行かねば。。。

あ、でも、表向きは、去年からヨーロッパに住んでる娘を尋ねるのが口実(笑)

ソンドラについてもっと知りたい方は、過去記事こちらから

で、ソンドラのTurandotの日程を軸に、じゃあ他ヨーロッパ都市では、何やってるの?って感じで、観たいリストを上げていきました。

すると、またもや私の一番好きなオペラ、Verdiの『Il Trovatore』が、英国ロイヤルオペラで同時期にある!

主役は、、、、おおおおおおお!またもや私の大好きなテノール、アメリカ人なのに、殆ど本国で歌わない(呼ばれない)クレゴリー・クンデ様がマンリーコ、そしてまたもや大好きで、現在超数少ないVerdi Baritonと言われるルドヴィック・テジエ。(これは次回)

しかし!

欧州旅行を約束したティーンの息子が、6月末まで、ボーイスカウトのトレッキング旅行でニューメキシコの山中。帰宅を待ってたら、オペラ観れない!

ということで、息子よりソンドラ、クンデ様、を選んで(笑)先にまずロンドンに飛び立ち、息子には、お初一人旅をさせることに。

私はお気軽独りで、ロンドンに着いたその夜にまず、トロヴァトーレ鑑賞。

そして翌朝チューリッヒに飛び『Turandot』と、強行スケジュール。

そして翌日は、英語圏の国では、上演数が圧倒的に少ないウェーバーの『魔弾の射手』。

こういう時は、無いエネルギーを振り絞れます(笑)。

不思議な演出『Turandot』

チューリッヒ歌劇場は、比較的実験的、モダンな演出が主流です。

今回の『Turandot』もモダン、というか、ぶっ飛んでました(笑) 

なんと、美しくも氷の心を持つTurandot姫は、女王バチの設定。。。

で、彼女に一目ぼれし、勇敢に3つのなぞ解きに臨む素性不明な若者(実は滅ぼされたダッタン王国の王子のカラフ)は、スーパーヒーローのコスチューム。

これは、どのスーパーヒーローか、私には謎だったけれど、後で友人や息子によると、日本のアニメ『Jojoの奇妙な冒険』のキャラにそっくりだそうな(-_-;)

不思議な幕前が全てを示唆?:演出

Turandotは、序曲や前奏曲がなく、北京の人々を恐れさせる条例を告げる役人マンダリンの数小節かの音楽で始まり、直ぐに観客は北京の街に導かれます。

今回の演出は、緞帳は無く、舞台が始まる前の時間=観客が会場で着席している最中に、白のツナギを着たペインタールックの人々が、舞台上の白い紙にペイントを塗っているんです。

一瞬、大道具係かと思った~。

でも、そのペインター姿の人々は、イケメン男性・スタイル抜群女性で、俳優・ダンサー。

そして彼らに導かれた、コーラスメンバー(北京の民衆)が次々と入場します。

ペインター服組は、コーラスメンバーをマネキン人形のように走っているポーズで静止させて、そして自分たちもジョイン。

みんな静止ポーズを決めたところで始めて、♪ジャジャジャーン、ジャーン、ジャン!

第一声は、マンダリン。

「北京の民よ、聞け!トゥーランドット姫にプロボースする者は、3問のなぞ解きに全を正解せねばならない!答えられない者は死刑となる!」

と恐ろしいお達しを伝えます。

一般的にはこのシーンは、マンダリンは強面で、市民は彼をも恐れてびくつく様子なのに、この演出は、天井から餌のように釣り降ろされたマンダリンが、怒る市民を怖がって、びびりながらお達しを伝え、逃げるように引き上げられました(笑)

そして、蛍光ブルータイル?みたいな衣装のカラフと、彼にマッチしたカラフパパのティムールと、奴隷娘(でティムールの付き人)のリューが登場。

カラフの動きが、わざとロボットの様?か胸を異様にはって、肩を怒らせてドシドシと歩く演技、、、、なんだー、こりゃ。

そして、大臣のピンポンパンは、目玉おやじのような被り物で登場。

またくもって謎な演出で、1幕が終わり、2幕目にやっとこさトゥーランドットが出てくると、彼女はパパ(皇帝)と一緒にロケットに乗るし。

今迄観た『Turandot』と決定的に異なる演出は、謎解きのシーン。

この(一応ヒーローの)カラフ、自分で答えは全く考えつかず(-_-;)。

第1と第2の質問の答え、「希望」と「血潮」は、アルファベットが描かれたサイコロ椅子に座る北京の市民が、椅子を使って答えをカラフに教えちゃうんんです。

で最後の答え「トゥーランドット」は、皇帝がトゥーランドット姫を指さして教えちゃうし(笑)

このカラフは、スーパーヒーローの恰好をしながら、またっくヒーローでもなんでもなく、おバカな感じ。そのおバカを助ける市民は、勿論もう求婚者が首を切られるのも嫌だし、超わがままなトゥーランドット姫を嫌ってる感も。

トゥーランドットはペット蜂?がいて、それがどうやら、死刑執行人のプー・ティン・パオ(歌わない役)なんですよね(-_-;)

パパ皇帝。背後はペット蜂こと死刑執行人のプー・ティン・パオ(笑)
パパ皇帝。背後はペット蜂こと死刑執行人のプー・ティン・パオ(笑)

トゥーランドット姫は、情緒不安定のようで、この死刑執行蜂ちゃんをすごーい可愛がったり、ひっぱたいたりするのよ、、、そんな姫にパパ皇帝もビクビク。。。

姫は歌わないときは、まるで貞子のように、首をカクカクするし(-_-;)

ー因みに、ソンドラはインタビューで、首が痛くなったわよ!と言ってました(笑)

そして、いくら美しい姫だからと言って、どっからどう考えても、この姫に恋して求婚してるとは思えない、おバカだけど、マッチョスーパーヒーロの恰好のカラフ。。。。

リューもかわいそうなリューってより、彼女が色々陰で操ってそうな感じだし。

この演出、感情移入は全くできませんでした(笑)

でも、余りにもぶっ飛んでいて、次の動きに目が離せないし、演出の意味と意図を探るのが面白かったです。(結局不明💦)

でも絶対初めて見る人には、お勧めではないです(笑)

圧巻なソプラノ:ソンドラ・ラドヴァノフスキー

今回、アメリカから遥かスイスのお山のふもとまで、ソンドラ・ラドヴァノフスキーを観に行った私は、お席の選択に悩みました。

実は、今回の旅行は、心では行くことは決めていたけど、実家の母が5月に手術して、その介護もあり(一時帰国していました)、実際にオペラのチケットを購入したのは、結構ギリギリだったんです。

で、残席から選択したのですが、いやあ、せっかく追っかけて行くのに、天井桟敷はどうか?とオーケストラ席(平土間)の最前列を贅沢にゲット。

なので、1幕目の最後にカラフが謎解きの挑戦を決め、どらを3回鳴らして後の、フルオーケストラと合唱と、まあすごかった(笑)

ぶっ飛ばされるような音量でした。

でも2幕目2場の最後、謎を全て答えてたカラフとの結婚を拒むトゥーランドット姫と、喜ぶ群衆とまたもや、ガンガン鳴らすフルオーケストラのシーンで、ソンドラの声は、オケを突き抜けてすごかった!

管楽器ガンガン、おまけに私はステージ向かって右側の席だったので、パーカッション側だったんですよね。ティンパニーがドドドドドドド―と鳴ってるのにも、それを打ち破って、ソンドラの「私、いやよー!!誰のものにもならないいいいいいいい~!」という歌声がもう響く響く(笑)

いやあ、スリル満点でした。

当然の如く、トゥーランドットのアリア「In Questa Reggia」は完璧。

正直余裕のよっちゃん、って感じでした(笑)

すごーく、この役彼女の声に合ってるんじゃないかなー。

なのに!!

この演出は、一般的に演奏される、3幕の最後の場面が演奏されなかったんですよねー。

マエストロの遺作

Photo by Monika Rittershaus ( Zurich Operahouse HPより)

Turandotを作曲したプッチーニは、この作品を完成せずに喉頭がんで死んでしまいました。

3幕目のリューが死ぬシーンが、プッチーニが実際に作曲した最後だったんです。

2幕目で謎解きに全部答えたカラフ(その時は、名無しのストレンジャーと呼ばれていた)が、結婚を嫌がる姫に、「夜明けまでに私の名前がわかれば、私は貴女を諦めます。」と逆なぞ解きをオファーしたました。

リューとカラフパパが、カラフと話していたというタレコミにより、この二人は名前を知ってる!と人々に判断されて、パパも拷問に合いそうになります。

でも、そこでリューが「知ってるのは私だけ。」と犠牲になり、拷問を受けるのです。

拷問の苦しさと、カラフファミリーを助けるために、

リューが、「この秘密(彼の名前)は、私と共に消えるのよ。」と自殺するんです。

なんと、このシーンが、ラストシーンなんです、この演出。

リューが死んでしまい、リューの亡骸が連れていかれ、人々が悲しみとショックで呆然としている中、姫とカラフは歩み寄りそうで、よらないまま幕、となりました。

その幕は、白で、そこには、「ここでオペラは終わりです。マエストロは、この場面(のところで)死んでしまいました。」と大きく書かれていました。その幕を二人は見上げるです。で、ライトアウト。

おしまい。

一般演出では、愛を信じて自らの命を絶ったリューの死を目の当たりにして、氷のような姫の心も急に溶け、愛に目覚めて(実は最初から惹かれていた)、めでたく二人は結婚するんですよね。

この二人、酷い人間だとよく言われるんですが、全くその通り(笑)。人を犠牲にして幸せになる😑

姫がいやよいやよ、と言いながらもカラフに急にキスされて、ドS姫が、急にしおらしくなっちゃって、ラブシーンの重唱とめでたいフィナーレになるんだけど、その音楽は、プッチーニが残した下書きから、フランコ・アルファーノが、作曲したんです。

これには、賛否両論があるけれど、一番一般的なスタイル。

最近にって、Berio版というのも作られ、それはもっと静かに終わり、ハッピーエンド??かどうか怪しい感じ。

まあ、その方がしっくりくるかもですが、この音楽も賛否両論。

どちらにしても、わたしはもっとソンドラを聴きたかったので、最後までやって欲しかった😢

因みに、来シーズンにソンドラは、ナポリとパリでTurandot姫を歌う予定です。

パリは、有名なRobert Wilsonの演出。あの、ハニワのように全員白塗りで、極力動かないで歌う演出です、嗚呼。パリで、通して歌う、ソンドラ聴きたいけど、この演出じゃあ、、、

チューリッヒ歌劇場

この劇場、表向きはエレガントだけどで派手さはないし、入ったロビーもシンプル。

でも、オーディトリウムは、超ゴージャスなんですよねー。

ネオロココの装飾。収容数は1200席と小さい。

メットの4000席に比べると、どこのお席からもよく見えそう、と思われがちですが、ヨーロッパの蹄型劇場に、上階はボックスシートのみなので、舞台がよく見えないお席が多いんですよー。

オーケストラ席をのぞいたら、どこに座っても、一列目をとるのが、必須です。

そして、ゴージャスな装飾も素晴らしいけど、何が感動したって、カフェの充実(笑)

コーヒーの美味しいことったら!!!!

感動しました。

メットオペラのコンセッション、ほんと見習ってほしいわ!

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